有名なパリの地下鉄。いまその構内ではフランスの若きミュージシャンたちが、ライヴで生の音を響かせています。しかし、乗車したくても張りめぐらされたパリのメトロポリタンにはナビゲーターが必要なのも事実。このコーナーではシャンソンの水先案内人を大野修平がつとめます。
この「ディスクガイド」は、サーバーの容量の関係で6ヶ月ごとに削除いたしますので、必要な方はご自分で保存してください。(管理人)
 
月刊「サ・ガーズ」 2000年5月号

     

LES ENFOIORES
《XXe siecle Derniere edition avant l'an 2000》
レ・ザンフォワレ 「20世紀 2000年直前最終版」
BMG74321703612

〈曲目〉

  1. Emmenez-moi
    世界の果てに  レ・ザンフォワレ
  2. Les lacs de Connemara
    コネマラの湖 パトリシア・ カース /パトリック・フィオーリ/ ギャルー
  3. C'est ecrit
    セ・テクリ エレーヌ・ スガラ /パスカル・オビスポ
  4. Le Sud
    ル・シュッド(南) アングン/ アラン・スーション /マキシム・ル・フォレスティエ
  5. La boheme
    ラ・ボエーム ミュリエル・ロバン /シャルル・アズナヴール
  6. Belle
    美しいひと セルジュ・ラマ /ダヴィッド・アリデイ/パトリック・ ブリュエル
  7. Chacun fait ce qui lui plait
    みんな好きなようにやるもんさ カレン・ミュルデール/マルク・ラヴォワーヌ /リシャール・ベリー
  8. Dis lui toi que je t'aime
    ジュ・テーム... ヴァネッサ・パラディ/エティエンヌ・ダオ /アラン・ランティ
  9. Une femme avec toi
    あなたといる女 リアーヌ・フォリー /モラーヌ /ヴェロニク・サンソン
  10. Et maintenant
    そして今は パトリシア・カース/ロック・ヴォワジーヌ
  11. Donner pour donner
    与えるために与えること ミシェール・ラロック/ナティーヴ /ハレド
  12. Coup de folie
    クウ・ド・フォリー オフェリー・ウインター /ジャン=ジャック・ゴールドマン
  13. La maison ou j'ai grandi
    私が育った家 レティシア・カスタ/ アラン・スーション
  14. Aux armes etc.
    祖国の子どもたちへ ラ・マルセイエーズ/エマニュエル・プティ/ビセンテ・リザラズウ/ファビアン・バルテス/アラン・ボゴシアン/リリアン・テュラム/クリスティアン・カランブー/ロック・ヴォワジーヌ
  15. C'est deja ca
    セ・デジャ・サ ザジ/ クンバ・ガウロ/ダン・ア・ ブラース /ルノー
  16. Besoin d'amour
    愛が必要 レ・ザンフォワレ
  17. La chanson des restos
    レストランの歌 レ・ザンフォワレ

   

 豪華な顔ぶれが集まったものだ。単なる顔見世興行ではない。恵まれない人々への食事の無料配給サービス、レストラン・デュ・クールLes Restaurants du coeur(心のレストラン)の活動を支援するために若手、ヴェテランのアーティストたちが一堂に会したのだ。喜劇役者コリューシュが1985年に呼びかけて始まったこの運動、本人が他界した後も、多くのボランティアに引き継がれている。寄付金を払った人は税金の割引が受けられる「コリューシュ法」に発案者の名は留められた。
 普段はそれぞれ個性を大切にし、好き勝手に生きているような印象も受けるフランス人だけれど、筋の通った主張には耳を傾け、必要とあれば一致団結して行動する。そのフットワークの軽やかさには見習うべきものがあると思う。
 85年のスタート時点で、ジャン=ジャック・ゴールドマンがレストラン・デュ・クールのテーマソングを書いた。こういう歌詞がある。「豪勢な夕べをいつも約束はできないけれど/ただ 冬に食べ物と飲み物を(・・・)人生を変えても/何時間かの間」
 アズナヴールの「世界の果てに」をワンフレーズずつリレー式に歌いながら始まる。「地の果てまで行けば太陽の下、惨めさはより少なくなるだろう」。辛い立場の人々の心を代弁するかのようだ。
 20世紀最後の年に入るからだろうか、出演者は自分のレパートリーにこだわらずに、1960年代から90年代にかけて多くの人々に愛唱されたヒット曲の数々をとり上げている。
 基本的には8ビートのアレンジが多いのだが、最長老のアズナヴールは「ラ・ボエーム」(5)のイントロにアコーディオンを用い、女性シンガー、ミュリエル・ロバンと大人のヴォーカルを聴かせる。
 98年8月に自殺してしまったニノ・フェレールNino Ferrerの「ル・シュッド(南)」(4)も甘美なバラードだ。アングン、アラン・スーション、マキシム・ル・フォレスティエの3人が組んで歌う。余談だが、ジャケットに掲載された写真を見る度に、マキシムの髪が薄くなるような気がする。キャリアに比例しているとも言えるかな。それはともかく、50歳になった彼の声は一段と温かい。
 パトリシア・カースも元気がいい。コーラスにまわっても、それとわかる声を響かせている。存在感が確実に増していると言えるだろう。
 ジャン=ジャック・ゴールドマンはオフェリー・ウインターと「クウ・ド・フォリー」(12)ではしゃいでいる。ティエリー・パストールThierry Pastorのこの曲が流行った82年、<Il suffira d'un signe>という彼の曲もまたヒットチャートを賑わしていたのだった。
 ゲンズブールがフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」をレゲエ・ヴァージョンにしてしまったのが79年。そのエスプリはここでも生かされている。ご愛敬なのは歌い終わり。ワールドカップ・サッカー決勝戦時(98年)の応援歌のひとつ、”On est champion...”が高らかに合唱される。(このメロディー、どうしても「伊東に行くならハトヤ」というCMソングのなかの「電話は4126(ヨイフロ)」と同じに聞こえて仕方がない。ハトヤの歌の方が先にできているはずだから、フランス側がパクッたのか、偶然なのだろうか…)
 20世紀後半のフランスのヒットパレードをちょっと振り返るような「レ・ザンフォワレ」の熱いライヴを楽しんだら、ジャケットに印刷されたロゴにもう一度目をやろう。ピンクのハートの左右に描かれたナイフとフォーク。このアルバムの売り上げはレストラン・デュ・クールに役立てられる。あなたがこのCDを買えば、何がしかの食べ物を手に入れられる人がいるという事をちょっと立ち止まって考えてみるのはどうだろう。

   


 

 

ジョルジュ・ガルヴァランツ
「オリジナル・サウンド トラック作品集」
 MSIF-9708

   

 シャルル・アズナヴールの義兄に当たる作曲家、ジョルジュ・ガルヴァランツが書いた映画音楽の代表作13曲を集めたアルバム。
 1960年代、イエイエの人気スターだったジニー・アリデイとシルヴィ・ヴァルタンが出演した「アイドルを探せ」の使用曲がある。青春真っ盛りの音楽と歌。
 シンガーとしてのアズナヴールの力量が見事に発揮された「八月のパリ」も聞きごたえがある。
 ガルヴァランツ作品のCDがこれまでなかったことに渇を覚えていた向きには、格好の1枚と言えそうだ。

   


 

 

「シェリーにくちづけ
ベスト・オブ ミッシェル・ポルナレフ」
 
ポリドール POCP-7480

   

 これまで輸入盤しかなかったポルナレフの代表曲のコンピレーション盤が、日本で初めてCD化、発売された。「ノン・ノン人形」「愛の願い」「君の幸福と僕の悔恨」「愛の休日」など全20曲を収録。イエイエに終止符を打ち、独自の感性で、新時代のロマンティスムを切り拓いた偉大なメロディー・メーカーの足跡を辿れる。
 続いて6月15日には「愛と青春のトゥルバドゥール]などのオリジナル・アルバムが4枚リリースされることになっている。