ふと思い立って小泉内閣支持率をインターネットで調べてみた。アサヒ.コムが11月11日21:56に発表した緊急世論調査の結果がヒットした。この日付、衆議院選挙直後だ。
(http://www.asahi.com/special/shijiritsu/TKY200311110277.html)
それによると支持率は47%で、小泉第二次改造内閣が発足した9月の59%を大きく下回った。不支持は37%(前回25%)となった。自衛隊のイラク派遣を公言したいまの支持率が気になるところだ。国民の大半の意思に反しての決断が、次の世論調査でどのように評価されるんだろうか。
用事があって大崎へ出た。来年1月9日、宝塚ベガホールでの「ニューイヤー・シャンソン・コンサート 人々の愛を歌う」という仕事の打合わせをしに行ったのだった。新年早々から仕事があるのは嬉しいものだ。深緑夏代さん、田代美代子さん、大原ますみさん、松本かずこさん、星奈佐和子さん、森下美智子さん、川島弘さんが出演するコンサートの司会を仰せつかっている。
横浜在住で深緑さんのファンであるKさんは先日、「楽しみにしています」というメールをくださった。これまたありがたいことで、励みになる。
帰りがけに目白で山手線を降りた。久しぶりにこの街のBOOK OFFに立ち寄ってみたくなったので。打合わせしたプロデューサーのTさんが、かつて本を読んでは感想を大学ノートに書きつけていた、という話をしていらしたことが頭に残っていたせいもあるかもしれない。
BOOK OFF目白店の地下売場でも何度か掘り出し物を見つけたことがる。昨日も何となくいい本との出会いの予感があった。新刊、古本を問わずに働くこうした勘は信じるに足る場合が多い。
鼻が利くということなのだけれど、「本が呼ぶ」としか言いようがないと感じることもしばしばだ。
気になっていながら未読の本が山ほどある。新聞や雑誌の書評、広告で見かけて興味を惹かれながらも買いそびれてしまったものだ。そんな本たちが古本屋の棚から僕に呼びかけてくるのだ。
昨日も僕に声をかけてきた本がある。天木直人著『さらば外務省! 私は小泉首相と売国官僚を許さない』(講談社)。天木さんは前駐レバノン特命全権大使だ。イラク戦争への反対意見を表明した電報を2通、外務省に打電したことが「組織の枠を踏み外した」として、本年8月29日付で同省を解雇されたことが話題になった方だ。
田中眞紀子前外務大臣をして「伏魔殿」と言わしめた外務省の内幕を窺うのに格好の本に違いない、と発刊当時から読みたいと思っていた本だった。
さっそく読み始めたら、どれもこれも驚くような話ばかり。出世と保身に明け暮れる外務官僚たちの姿が赤裸々に語られている。よくもまぁ、こんな程度の人間が日本の外交を担っていたものだ、と開いた口が塞がらない。
まずは問題の電報の件から本書は始まる。
本国政府に対してわが国の取るべき外交政策について意見を述べることを「意見具申する」との説明が冒頭にある。首相、外務大臣にまで届けてほしい公電をA指定と言うそうだ。しばしためらった後、天木氏は3月14日午前9時30分、政府の方針に異を唱える意見具申を川口順子外務大臣に宛てて送る。「本電を総理、官房長官に供覧願いたい」と結ばれた、A指定公電だ。
「国連決議なしの対イラク攻撃は何があっても阻止すべきである」。パレスチナ和平問題解決へ向けての「中東和平交渉の一日も早い再開が必要である」といった、まっとうな意見だ。
しかし、「本省からはなんの反応もなかった」。(同書 p.21)
天木氏は二度目の意見具申を3月24日に行なう。国際的停戦の枠組みを作ることを提言したもので、これまた実にまともだという印象を受ける。が、外務省の反応は冷たい。北島信一官房長から人事異動を匂わせる電話がかかってきたのだった。そして竹内行夫事務次官から届いた1通の通知書。川口外相が進める外務省改革の一環として、天木氏の「勇退」を迫る内容。事実上の退職通知だ。
国が誤った方向へ行かない道を探るために互いに意見を戦わせ、本国政府にそれを提出するのが大使たちの務めであるはずだ。ところが、天木氏以外に対イラク攻撃への反対意見を明らかにした大使はいなかった。日米同盟を主軸として固められる政府方針に盾突いたところで何の効き目もない、という諦めからなのだろうか。
この本を読むと、国のために良かれと思って懸命にいろいろな提案をする天木氏の公電に外務省側から「まったく連絡がない」という表現をよく見かける。同省としては首相官邸の機嫌を損ねたくない、という配慮なのだろう。その官邸はアメリカの機嫌ばかりを気にしているというわけだ。
これじゃ、やる気のある外交官は育たないだろうと思える。
小泉純一郎首相への幻滅が日を追って僕のなかでは増している。僕ごときの思いなど、小泉さんは虫けらほどにも気にも留めないだろうけどね。
首相は短いフレーズで明快に語ることで定評がある。が、イラク問題に関しては、口を開けば「日米同盟の重要性」を繰り返してばかりいる。
ドイツとフランスはイラク開戦をめぐってアメリカと真っ向から対立した。そのせいでアメリカの不評を買うはめになったけれど、言うべきことははっきり言うという態度はわが首相と比べて印象的だった。
天木氏はシラク仏大統領から小泉首相にかかってきた電話のエピソードを紹介している。対イラク攻撃に反対する自らの信念を語ったシラク大統領に対し、小泉首相は官僚が書いた言葉を繰り返すだけだった。天木氏は書く。「私は改めて、彼我のリーダーの器量の違いを見せつけられた気がした」。(同書 p.180)
この時、シラク大統領は「国連によるイラク査察を続けるべきだ」と語った。それに対し、われらが首相は「ところでシラクさんは日本びいきで、相撲がお好きでしたね」とトンチンカンな答をしたんだそうだ。そんなことを口走るべき時だろうか。
松岡克俊・要人外国訪問支援室長が官房機密費を詐取した事件や、外務官僚を名指しで批判する天木氏の筆は、鮮やかに同省の腐敗ぶりを描き出している。どれもこれも知らなかったことばかりだから、ある意味では興味深く読み進めていける。が、同時に暗澹たる思いにとらわれるのをどうすることもできない。日本という国の行く末を思うと空しさ、無力感も襲いかかってくる。
政治家、官僚が当てにならないのなら、せめて民間人の僕たちが世界の人々からバカにされない人間として生きようと努める必要があるだろう。