♪「シャンソンを貴方に…」〜シャンソン情報TV番組オンエアのご案内〜
東京メトロポリタンテレビジョン(MXTV)にて毎回多彩なゲストをお迎えして見ごたえのある30分番組となっています。
 *放送スケジュールは変更される場合があります。ご了承下さい。
   ☆TOKYO MXTV
 
   ☆群馬テレビ
パリを歌ったシャンソン 【監修】大野修平 出演:芦野宏、深江ゆか、山添恵子、岩崎桃子
   1月 4日(水)20:00〜20:30
   1月18日(水)20:00〜20:30
   (再放送)
 
   1月11日(水)22:00〜22:30
   1月18日(水)22:00〜22:30
   (再放送)
2004年5月、フランス政府よりオフィシエ章(芸術文化勲章)を受賞した芦野宏のニュー・アルバム。『コートダジュールからの風』 (キング KICD-38)¥2,500(税抜価格¥2,381)
シャンソン珠玉の名曲をボサノバ、タンゴ、ジャズにリアレンジ。ギターサウンドが南フランスの海岸に吹く微風をイメージさせる。アコーディオン、チェロも加わり、フランス語による芦野宏のヴォーカルが軽やかさ、華やかを添える。シンガー・ソングライター、KOKIAによる書き下ろし曲「ラルム」も聴きもの。
バックナンバー→  12月 5日〜 12日〜 19日〜 26日〜  1月 6日〜 11日〜 16日〜
 

パリ、旅のアウトライン(その4)  2月3日(金)晴れ

 

 1月21日(土)、Yasuにひとつの提案をした。長い間、思い描いていていながらこれまで果たしていなかったことだった。
 「パリで一番長いというヴォージラール通りを歩き通してみないか」。彼は快諾してくれた。よし、決まった。

 朝食後、サン=ミッシェル大通りからソルボンヌ広場へ。右折するとヴォージラール通りが始まる。このあたりの第6区から地下鉄6号線・12号線のパストゥール駅を経て第15区のポルト・ド・ヴェルサイユまで歩こうというわけ。

 ただ歩くだけでは面白みに欠ける。終点からさほど遠くない所にジョルジュ・ブラッサンス公園がある。この近くに“シャンソンのポルノ作家”ブラッサンスが住んでいたことから名前がつけられた。
 隣接したブランシオン通りでは土曜日・日曜日には古本市をやっている。そいつを冷やかそうとYasuに持ちかけてみた。彼はまたしても快諾。気のいい友だ。

 のんびりと歩いた。二人でとりとめのない話をしながらだと長い道のりも苦にならない。
 そうこうするうちに、見本市などの展示会場として使われるパルク・デゼクスポジシオンがある、ポルト・ド・ヴェルサイユ広場の前に着く。ここでヴォージラール通りは終わる。「やった」と二人で喜んだ。

 ルフェーブル大通りからダンツィグ通りを左に折れ、モリヨン通りを右に曲がってジョルジュ・ブラッサンス公園の正門前に出る。
 ベンチでひと休みすることにした。ブラッサンスには「ベンチの恋人たち」"Les amoureux des bancs publics" というシャンソンもあるから。

ジョルジュ・ブラッサンス公園のたたずまい (撮影:Yasu)

 ブランシオン通りは目と鼻の先。架設のテントが建ち並んだ所が古本市の会場だった。見渡す限り、本、本、本。宝の山に迷い込んだ幸せを全身で感じる。お互いに探すものが異なっているので、30分後に落ち合うことにして別行動。

 さっそく面白い本を見つけた。《Apollinaire Enregistre et filme en 1914》『1914年に録音され、撮影されたアポリネール』。
 詩人のギヨーム・アポリネールが1914年に自作の詩「ミラボー橋」"Le pont Mirabeau"、「マリー」"Marie"、「旅する者」"Le voyageur" の3篇を朗読したCD付き。

朗読と動く写真が楽しめる《Apollinaire Enregistre et filme en 1914》

 さらにデッサン画家で作家だったアンドレ・ルヴェユールと一緒にいるところを映像に収めたもの。それを1枚1枚の写真にして集め、パラパラ漫画みたいにページをめくると動くように構成してある。
 手にとって実際にやってみる。と、なるほど動く、動く。帽子をかぶったアポリネールが正面を向いたり、右手を上げたり、微笑んだり。
 これは楽しい。さっそく買うことにした。

 この古本市でシャンソン関係の本はさほど多くはなかった。でも、去年暮にシャンソン歌手の石井好子さんからお送りいただいた本が出ていた。サーカスとミュージックホール・アカデミー編《Histoire du Music-Hall》『ミュージックホールの歴史』(Editions de Paris, 1954)。
 念のために値段を見て驚いた。100ユーロ! 約14,000円だった。改めて言いたくなってきた。石井さん、どうもありがとうございます。

石井好子さんからいただいた本《Histoire du Music-Hall》

 夜はシャンソンのライヴを観に行くことにした。幸い、ホテルから遠くない所にエサイオン Essaion というライヴハウスがある。
 サントル・ポンピドゥー脇のボーブール通りを渡ってすぐ、ピエール・オー・ラール通りの一角。気をつけていないと通り過ぎてしまいそうな小路の奥にひっそりと佇んでいる、といった感じの店。

 情報誌パリスコープで調べてみたら、この日の演し物は「サ・シャントゥ・ア・パナム」"Ca chante a Paname"。訳してみれば「それはパナム(パリの愛称)で歌っている」といったところだろうか。
 出演者はシルヴェール・モリソン Silvere Morisson とリヴ・ゴーシュ・アン・シャンタン Rive Gache en chantant。どちらも聞いたことのない名前だった。

 興味津々で階段を下りていった。右手が劇場 Theatre、左手がキャバレ Cabaret と表示してある。受付があって入場料15ユーロを払う。目指すはキャバレ。

エサイオン入口 (撮影:Yasu)

エサイオンのチケット

 地下にある店内の照明は暗すぎない程度に落としてある。壁も天井も石がむき出しになっており、歴史を感じさせる。これだけでもすでにいい雰囲気を醸し出していると言える。

 テーブルに着き、ワインを飲みながら待っているとギターを手にしたシルヴェール・モリソンのステージが始まった。時々、ピアノも弾く。自作のシャンソンを楽しげに歌う。すでに経験を積んでいる印象を受けた。

 続いて登場したのがリヴ・ゴーシュ・アん・シャンタン。グループ名なのか、スペクタクルのタイトルなのかいまひとつ分らなかった。
 男性歌手はイヴ・ピニョ Yves Pignot、ピアニストはエマニュエル・ドゥポワ Emmanuel Depoix。ピニョは60歳を超えているだろうか。後で聞いたところによると、アカデミー・フランセーズの役者もやっているとのことだった。

 ピニョは観客に向かって親しげに語りかける。セーヌ左岸のキャバレの名前の数々を挙げながら歌を続けていった。そうしたキャバレで歌っていた歌手たちの名前と顔も想起させる。自然で楽しい語り口に好感が持てた。
 時折、ピアニストのドゥポワも歌う。軽妙な感じがまたいい。

 彼らはCDをレコーディングしたという。実物はまだ手元にないとのことで、お金を払い、予約してきた。届くのが楽しみだ。

 楽しいシャンソンとうまいワインですっかりいい気分になった。満たされた思いで夜のボーブールを歩いてホテルに戻った。

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お  知  ら  せ

詳細は10月25日付本欄をご参照願います。

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 同じページを下方へスクロールしていくと、左側に写真が縦に並べられています。いろいろなドキュメントを見ることができます。
 上から5番目に"Allumez une bougie"「ローソクを灯して」という項目があります。写真をクリックすると、多くのローソクが並ぶ画面になります。一番下にあるローソクの絵をクリックしてみましょう。その絵が動いてすでに光を放っている列に向かって進んで行きます。
 これで、ヴァーチャルなローソクを1本灯したことになるのです。


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パリ、旅のアウトライン(その3)  2月1日(水)雨

 

 1月20日(金)にはセーヌ右岸を散策した。いわゆる名所めぐりではない。シャンソン・フランセーズゆかりの地を訪ねることにした。キャバレの跡を探してみたのだ。

 どうも日本語で言う「キャバレー」だと意味とニュアンスが異なって聞こえてしまうので、念のために確認しておこう。
 「キャバレ」"Cabaret" とは、飲食しながら音楽などの演し物を楽しむことのできる施設の総称。

 日本ではシャンソンを楽しむ店のことを「シャンソニエ」"Chansonnier" と呼び習わしているけれど、これは本来はシャンソンの作者や歌手、風刺的なモノローグをする人を指す。

 歌手としての初めの一歩を踏み出し、観客とのコンタクトの取り方を身に着けるための修行の場がキャバレだった。シャンソン・フランセーズ史上に名を残している多くの歌手やシンガー・ソングライターがキャバレで研鑽を積んだ経験を持っている。彼らはそこで自分自身のスタイルを手に入れていったのだ。

 これに対して、飲食することなしにステージを観るための施設がミュージック・ホール。歌だけでなく、アクロバットやダンス、動物芸、漫談、道化師なども披露された。日本流に言えば寄席に当たると言えるだろう。寄席では落語がトリを取るように、ミュージックホールでは歌がトリを務めるのが決まりだった。

 いまも残るミュージック・ホールの代表格はオランピア劇場だ。もっとも、現代では他の諸芸を省いて単なるコンサート会場として利用されるようになっているけれども。

 今回、ジベール・ジョゼフ書店で興味深い本を1冊手に入れた。ジャン・ラピエール著『パリのシャンソン』Jean Lapierre 《La chanson de Paris》(Aumage editions, 2005)。セーヌ右岸、左岸に存在したキャバレについて書かれた本だ。
 写真や図版はひとつも入っていない、文字だけの本だけれども僕のイマジネーションを限りなく刺激してくれる。

 ジョルジュ・ムスタキがこの本に序文を寄せている。
 シェ・ベルナデット Chez Bernadette、ポール・デュ・サリュ Port du Salut、ミロール・ラルスイユ Milord l'Arsouille、ラ・コロンブ La Colombeといったキャバレの名を挙げた後、こう書いている。
 「それは私たちの若い日々であり、ある人々の青春時代だった。私たちの夢、愛、希望、ユートピアだった」。

 この本にインスパイアされてシャンソン・フランセーズのアーティストたちを育んだキャバレの跡を見て歩こう、と思い立った。

 ホテルの近くからYasuと二人で行脚を始めることにした。
 まずサン=トノレ通りにある〈エスパス・サン=トノレ〉 Espace Saint-Honore。ここは昔〈レシェル・ア・クーリス〉 L'Echelle a coulisse と言った、とジャン・ラピエールの本に出ている。訳せば「舞台袖の梯子」。実力あるプロが新人に手を貸すための場としてこの名前が選ばれたという。
 いまもライヴを行なっている。

元レシェル・ア・クーリス

 次はオペラ通り5番地。〈ラ・テット・ド・ラール〉 La Tete de l'Art 跡地。大きな建物は残っているが他のブティックなどが入り、まるで姿形を留めていない。
 反対側に渡り、モリエール通りに入る。〈シェ・アニエス・カプリ〉 Chez Agnes Capri を探す。 ジャック・プレヴェール作詞、ジョゼフ・コスマ作曲による「鯨捕り」などをはじめて歌った歌手のひとりアニエス・カプリが開いた店。いまは何やら山羊のイラスト看板がかかったクラブのように見受けられる。

元シェ・アニェス・カプリ

 次に近くのパレ・ロワイヤルそばにあった〈ミロール・ラルスイユ〉 Milord l'Arsouille 跡を目指す。ボージョレ通りというのが分りにくく迷っていたら、上品なマダムが声をかけてきてくれた。「ついていらっしゃい」と先に立って案内までしてくれる。嬉しいご親切に、Yasuともども感謝。キャバレがあったと思しきあたりには何の痕跡もない。
 ここで若き日のセルジュ・ゲンズブールは女性歌手ミシェール・アルノーのピアノ伴奏をしていたのだった。

元ミロール・ラルスイユ

 少し先のプティ・シャン通りには〈ラ・ベル・エポック〉 La Belle Epoque があることは知られている。同じ通りの49番地には〈レシャンソン〉L'Echanson というキャバレがあった、と上記ラピエールの本にある。
 シャンソン歌手のマルセル・アモンはここでシャルル・アズナヴールやジョルジュ・ブラッサンスを見かけたそうだ。が、いまは住所表示もなく、カフェになっているのがその跡地のようだ。

 プティ・シャン通りを元の方向に戻り、ヴィクトワール広場を経てアブキール通り50番地にある〈サンティエ・デ・アール〉 Sentier des Halles へ。有望な若手が出演する場所だ。ジョルジュ・シュロン、アラン・ルプレスト、マノ・ソロ、リンダ・ルメイ、アルテュール・H(アッシュ)、ローナ・ハートナー、サンセヴェリーノ、ミケ3D(トロワデ)などを輩出している。

サンティエ・デ・アール

 いま来た通りを直進してレオミュール通りを右折、セバストポール大通りにぶつかって左折する。サン=ドニ通りとの交差点を渡り、ストラスブール大通りに出る。4番地にあったのがカフェ・コンセール〈エルドラド〉。いまはコメディア・テアトルとなり、『ピュグマリオン』(『マイ・フェア・レディ』のフランス版)を公演中だった。

元エルドラド

 通りを挟んだ向かい側にはやはりカフェ・コンセール〈スカラ〉Scala があった。しかし、いまは見る影もない。

シャンソン通り

 ストラスブール通りをそのまま進む。ギュスターヴ=グブリエとパサージュ・ド・ランデュストリーのあたりにはその昔、ボレル=クレール、ヴァンサン・スコット、レオ・ダニデルフといったシャンソンの作曲家たちの住まいがあった所。ジャン・ラピエールの本には「シャンソン通り」として紹介されている。
 いまはパサージュ・ド・ランデュストリー界隈にはなぜか美容院が多い。

元スカラ前

 サン=ドニ通りとの交差点まで引き返し、右折してボンヌ・ヌーヴェル大通りに入る。すぐに通りの名前がポワソニエール大通りと変わる。
 そこの11番地にあったのが、ミッティ・ゴルダンが1934年にオープンした〈ABC〉(アベセ)。シャンソン史上名高いミュージックホールだ。
 イヴェット・ギルベール、リュシエンヌ・ボワイエ、ダミア、フレエル、マリー・デュバ、ミスタンゲット、エディット・ピアフ… ここのステージに登場したスターたちは枚挙に暇がない。1938年、シャルル・トレネがソロシンガーとしてのスタートを切ったのもここだった。

 いまは住所表示も見当たらないので、おそらくこのへんだろうと見当をつけて写真を撮った。

元ABC?

 ポワソニエール大通りが尽きるあたりから右に折れ、フォーブール・モンマルトル通りに入る。いまはテアトル・デュ・ノール Theatre du Nord となっているこの通りの13番地には〈ル・サントラル・ド・ラ・シャンソン〉Le Central de la chanson があった。ここも新人たちに門戸を開いていたスペースで、モーリス・シュヴァリエが命名した、と例の本にある。

元ル・サントラル・ド・ラ・シャンソン

 今回の行脚の最後は〈シャ・ノワール〉Chat Noir(黒猫)。
 フォーブール・モンマルトル通りをさらにまっすぐに歩き、ノートル=ダム・ド・ロレットを過ぎ、マルティール通りを北上してヴィクトル・マッセ通り12番地を目指した。

 〈シャ・ノワール〉とくれば、シャンソン作者であり歌手だったアリスティード・ブリュアンの名前を忘れるわけにはいかない。ブリュアンは「シャ・ノワール」というシャンソンを書いて歌った。録音も残されている。
 1881年の開店当初は少し先のロシュシュアール大通りにあったのが、1885年にヴィクトル・マッセ通りへと引っ越した。その時、常連がそれぞれ手に手に椅子やら調度品やらをを持ってブリュアン作の「シャ・ノワール」を歌いながら引越しを手伝ったというエピソードもある。そのルフランはこうだ。

俺たちは探す 幸福を
シャ・ノワールのあたりで
月明かりの下
毎夜 モンマルトルで

Nous cherchons fortune
Autour du Chat Noir
Au clair de la lune,
Monmartre, le soir

 〈シャ・ノワール〉の跡にはいま、建物の壁にプレートが嵌め込まれているだけ。そいつをカメラに収めることにした。いい塩梅に工事用の足場があったので、その上に乗って撮らせて貰った。

シャ・ノワール跡のプレート

 プレートには次のように文字が刻まれている。
 「通行人諸君、歩を止めたまえ。この建物はロドルフ・サリスによってミューズ(芸術の女神)と歓楽に捧げられたもの。ここにはかの有名なるキャバレ シャ・ノワールが1885年から1896年まで存在していた」。

 セーヌ右岸にはまだ訪ねるべきキャバレ跡地があるけれど、この日はこれくらいで引き上げることにした。

*         *        *

 その日の午後8時、ツシマさんに会いにYTTへ。新しいアシスタントのSさんと初めて顔を合わせる。お二人の仕事が済むのを待って、一緒にディナーのテーブルを囲みに出かけた。大ぶりのアンドゥイエットが滅法うまい店でワインも進んだ。ツシマさん、ご馳走さまでした。どうもありがとうございます。

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お  知  ら  せ

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パリ、旅のアウトライン(その2)  1月30日(月)晴れ

 

 1月19日、モンマルトル界隈を歩く。
 コラ・ヴォケールが歌った「モンマルトルの丘」"Complainte de la Butte" に出てくるサン=ヴァンサン通りとソール通りに面して葡萄畑がある。ラパン・アジルの目の前でもあるこの畑ではいまも葡萄が収穫され、ワインが造られていることはかねて聞き及んでいた。しかし、これまで実際に飲む機会はなかった。

 コルト通りにあるモンマルトル博物館でそのワインが売られていることも分っていたので今度こそ手に入れてみたいと思い、Yasuを誘って行ってみた。
 午前10時、土産物コーナーを兼ねた入口で入場料5.5ユーロを払い、荷物を預ける。ワインはそこのガラスケースのなかに展示されていた。2005年産のワインはすでに品切れで、2004年産のものが2本残っている。

 名前は「クロ・モンマルトル」"Clos Montmartre"。1556平方メートルの畑から造られるワインで、年間1800本ほどしか生産されていない。葡萄の品種はガメイ、ピノ・ノワール、メルロなどが混醸されているそうだ。
 値段は40ユーロとやや高めだけれど、生産量が少ないのだからやむを得ないだろう。Yasuが1本買った。

 2004年産のラベルにはシャンソン歌手ミスタンゲット Mistinguette(1873〜1956) の姿が描かれている。

モンマルトルのワイン「クロ・モンマルトル」

ミスタンゲットが微笑む2004年物

 なぜミスタンゲットなんだろう? 帰ってから調べてみたら、こんなことが分った。

 20世紀の初め頃にはモンマルトルのワインはもはや過去のものとなっていた。この畑に葡萄の木が再び植えられたのは1933年のこと。有名なデッサン画家フランシスク・プールボ(1879〜1946)の発案によるものだった。

 翌年10月3日には、収穫祭が当時のアルベール・ルブラン大統領臨席の下に執り行なわれる。後援者には歌手のミスタンゲットとフェルナンデル Fernandel(1903〜71)の名前があった。

 そこで、再収穫から70年目に当たる2004年のラベルに「サ・セ・パリ」で知られるミスタンゲットが選ばれたというわけ。シャンソン歌手の存在がいまもこうした場面でクローズアップされているのが嬉しい。

 モンマルトル博物館のなかに入るのは初めてだった。この地にゆかりのある画家たちの作品が展示されている。ロートレック描くアリスティード・ブリュアン
Aristide Bruant(1851〜1925)がある。つばの広い黒い帽子と赤いマフラー。モンマルトルのシャンソンを語る際には欠かせない名前だ。

 シュザンヌ・ヴァラドンやユトリロの絵もある。彼らの生きた時代に思いを馳せる。モンマルトルにはいまも彼らの青春の残光が輝いているかのようだ。

 外に出る。テルトル広場あたりには、今日も画家たちが観光客の似顔絵を描こうたむろしている。彼らはモンマルトルの栄光にすがりついて商売しているように見える。彼らにもそれぞれの「ラ・ボエーム」があるんだろうなぁ。

 ノルヴァン通りにはシャンソンを聴かせるレストラン、シェ・マ・クズィーヌ Chez ma cousine がまだある。いまも夜はライヴをやっているらしい。1988年に一度だけ立ち寄って鴨のローストを食べながらショーを観た。2階は狭く、料理を持ったボーイが「Chaud!(ショー:熱いよ!)と叫びながら何度も僕の背後を通り過ぎて行ったのも楽しい思い出だ。
 ジャック・ブレルも訪れては一杯やっていたと言い伝えられている。いつか機会があったらまた来てみたい店のひとつだ。

                        (つづく)

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パリ、旅のアウトライン(その1)  1月27日(金)晴れ

 

 一昨日の25日、パリから戻った。帰り支度の際に大急ぎで詰め込んだトランクの中身みたいに、この1週間の出来事が頭のなかに相前後しながらうごめいている。
 ほろ酔い気分が続いているような感じとでも言えばいいだろうか。祭りの興奮がいまなお冷めやらないような精神状態が続いている。

 高校時代の同級生、Yasuとの旅だった。彼にはフランス人の恋人がいるせいもあって足繁くパリに通っている。お互い、フランス文化やパリの街についてひとかたならぬ思いを抱いているところで気が合う。

 いつまでも空を漂い、雲の上をさまよっているわけにはいかない。いまや着陸の時だ。日常の世界への滑走路に足を着けるとしよう。そのためにもパリの日々をおおまかに振り返っておきたい。

 出発は17日火曜日、午後1時30分。成田空港第2ターミナルでYasuと落ち合う。アリタリア航空と日本航空の共同運航便に乗り込み、まずはローマのフィウミチーノ空港を目指す。この立ち寄りは初めてなので嬉しかった。帰りの便はミラノのマルペンサ空港で飛行機を乗り換えることになっている。

 パリ、シャルル・ド・ゴール空港に着いたのは午後9時45分。メールでやり取りしたとおり、エリックとヴィルジニーが迎えに来てくれていた。昨年の11月、荻窪・東信閣での「シャンソンの夕べ」以来の再会。
 挨拶を交わし、自動車に乗り込む。

 北駅、トリアノン劇場のあるロシュシュアール大通り、ムーラン・ルージュがまわるクリシー大通りなど、シャンソン好きにはお馴染みのスポットをコースに織り込んでくれる。エリックらしい心遣いだ。
 幸い車道は空いており、流れがいい。宿を取ったシャトレにはすぐに着いた。翌日の夕食を共にする約束をしてエリック、ヴィルジニーにおやすみを言う。

 地下鉄シャトレ=レ・アール駅間近のホテルにチェック・イン。交通の便がいいのが何よりと思い、この界隈のホテルをよく利用する。
 Yasuとの申し合わせでなるべく安い部屋を取った。で、彼も僕も屋根裏部屋。壁は斜めになっていて、窓もその傾斜に沿って作られている。

 広さは四畳半くらいだろうか。まあ「起きて半畳、寝て一畳」というくらいだから、これで文句はない。
 屋根裏部屋からの眺めというのもまた乙なもの。アズナヴールのシャンソン、「ラ・ボエーム」の主人公もこんな部屋で絵を描く青年だったのかな、などと想像して楽しんでみる。

 18日(水)。ヴィレットにあるシテ・ド・ラ・ミュジーク Cite de la Musique へ。当サイトの「リンク集」にも入れてあるオール・ド・ラ・シャンソン Hall de la Chanson を訪ねてみたかったのだ。
 同館では「ジョン・レノン展」をやっていた。しかし、お目当ての場所が見当たらない。いろいろな人に聞いてみても「さぁ、知りませんねぇ」と言われるばかり。仕方ない、出直そう。

 ヌイイにあるエリック宅で夕食。地下鉄3号線のルイーズ・ミッシェル駅から少し歩く。約束の7時過ぎに到着。6歳のマリーがまだ起きていた。これまで何回も彼の家に行っているけれど、就寝後ばかりで顔を合わせるのは初めてだった。

 ヴィルジニーによく似ている。日本からエリックが買って帰ったらしいピンクの着物姿で僕たちの前に現われた。はにかみながらも、遠来の客に興味がある様子だった。
 僕のために塗り絵を描いてくれていた。なぜかインディオか何かの人形のような塗り絵。可愛いらしい心遣いが嬉しくて、大切に持ち帰って来た。

 マリーを寝かせてから食事が始まった。Yasuも積極的にフランス語を駆使して会話する。
 アメリカやカナダなど諸外国に旅しているエリックとヴィルジニー。カナダのケベック州はフランス語圏だけれど、フランス本国にはない言いまわしがあり、初めて行った時には理解できなかったという。

 「友と夕食を摂る1時間…/1時間か2時間、それはあなたの心を温めてくれる…」"Diner avec un ami une heure... / Une heure ou deux, ca vous rechauffe le coeur..."
 シャルル・トレネが1981年に発表した「友との夕食」"Diner avec un ami" の一節が頭のなかで鳴った。

                        (つづく)

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お  知  ら  せ

詳細は10月25日付本欄をご参照願います。

イングリッド・ベタンクール解放を呼びかけるポスター

 国際イングリッド・ベタンクール連盟委員会が全世界的に幅広い支援を呼びかけています。詳細はサイトhttp://www.educweb.org/Ingrid/をご覧下さい。日本語でも読むことができます。

 サイトhttp://www.ingridbetancourt-idf.com/otages/にも注目して下さい。画面右にある"Telechargement"(テレシャルジュマン=ダウンロード)から、イングリッドのポスターをダウンロードできるようになっています。この「お知らせ」欄に掲げた写真と同じものです。

 同じページを下方へスクロールしていくと、左側に写真が縦に並べられています。いろいろなドキュメントを見ることができます。
 上から5番目に"Allumez une bougie"「ローソクを灯して」という項目があります。写真をクリックすると、多くのローソクが並ぶ画面になります。一番下にあるローソクの絵をクリックしてみましょう。その絵が動いてすでに光を放っている列に向かって進んで行きます。
 これで、ヴァーチャルなローソクを1本灯したことになるのです。


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☆『ディア・ピアフ ベスト・オブ・エディット・ピアフ』
(東芝EMI TOCP-67296)

ピアフを敬愛するアーティストたちがセレクトした11曲を含む珠玉のベスト・アルバム。
「恋人が一輪の花をくれた」石井好子 撰/「バラ色の人生」椎名林檎 撰/「パリの空の下」小野リサ 撰/「いつかの二人」クレモンティーヌ 撰/「水に流して」中島みゆき 撰 他全20曲、【解説】大野修平。


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(対訳または解説:大野修平)
   
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