いま、ポエジーのある歌が聴きたい!
大野修平著 『わが心のシャンソン 〜 そして詩人の魂をめぐって』

平凡社刊 定価:1575円[税込]全国の書店で好評発売中。

大野修平が出会った歌手とシャンソンたち。原詞と対訳を掲げてその魅力を探る。
〈収録アーティスト〉シャルル・トレネ/イヴ・モンタン/フランシス・ルマルク/レオ・フェレ/コラ・ヴォケール/セルジュ・ゲンズブール/ジャンヌ・モロー/ジャック・ブレル/ジョルジュ・ブラッサンス/ピエール・バルー/ジュリエット・グレコ/ジョルジュ・ムスタキ/ジルベール・ベコー/エディット・ピアフ/シャルル・アズナヴール そして21世紀のシャンソン歌手たち。


大野修平、最新の書き下ろしが刊行されました。
どうぞ書店でお手に取ってご覧下さい。

『哀愁と歓びのシャンソンの名曲20選〔CD付〕』
(中経出版)¥1,800

シャンソン関連のコラム、シャンソンゆかりの場所を示した
パリのイラスト地図も入ってます。
よろしかったらご感想やご意見をメールなどでお寄せ下さい。

◇ お 知 ら せ ◇
 大野修平が講師を担当する「シャンソン de フランス語」が始まりました。インターネットでフランス語のレッスンができます。ご利用には料金がかかりませんのでお気軽にどうぞ。
動画レッスンURL:http://www.unself.jp/
トップページから「語学」の項目をクリックしてお入り下さい。
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ライヴと試写会  9月28日(金)晴れ

   

 いよいよ明日から、オリヴィエ・ダアン監督映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』が全国拡大ロードショーが始まる。
 ピアフになりきるマリオン・コティヤールの演技が素晴らしい。

 26日、東京国際フォーラム・ホールCで試写会が催された。
 クミコによるライヴも試写会に先立って行なわれた。クミコはこの機会に、イメージミニアルバム『クミコmeetsピアフ』(avex IOCD-20229)をリリースしている。

 上條泉がピアノを弾き、クミコはアルバム収録曲6曲を披露した。曲間には軽妙なお喋りを交えていた。
 彼女のヴォーカルには常に説得力があるけれど、なかでもみずから訳詞した「私の神様」は聴きごたえがあった。

 やはり劇場の大画面で観る映画は迫力が違う。エディット・ピアフの壮絶な人生が、圧倒的なリアリズムで観る者の胸を打つ。
 劇場で試写を観るのは二度目だけれど、いくつものシーンで涙が頬を伝った。周囲からもすすり泣きが聞こえてきた。

 主演のマリオン・コティヤールは、まぎれもなく、ピアフの人生を自分のものとして生きている。それが画面に焼きつけられている、そんな印象を強くした。
 オリヴィエ・ダアン監督の才能にも脱帽、としか言いようがない。

 この映画のプログラムに原稿を書く機会を得たことは、ほんとに光栄だ。

 素晴らしい、という月並みな言葉しか思いつかない。
 ぜひ、シャンソンとエディット・ピアフの好きなみなさんに観ていただきたいと心から願っている。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

ムービーアイ エンタテインメント(株) 映画配給部
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目1-2 ダヴィンチ銀座ビル4F 
TEL:03-5537-0151 FAX:03-5537-0853
http://www.movie-eye.com
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(C)2007 LEGENDE-TF1 INTERNATIONAL-TF1 FILMS PRODUCTION
OKKO PRODUCTION s.r.o.- SONGBIRD PICTURES LIMITED

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心に残るシーンの数々  9月26日(水)晴れ

   

 心に残るシーンの数々は、毎日のように僕たちのまわりに転がっている。
 それらを見逃してしまうこともあるけれど、四つ葉のクローバーを探す時みたいに気をつけて眺め渡していれば見つかる場合が多いものだ。

 『ピアフへのオマージュ バラ色と黒の人生』の興奮がまだ残っている9月17日、楽しい映像を見た。
 TV局フランス2のニュース番組"8H"(http://jt.france2.fr/8h/)のレポート。リュシエンヌ・ドリールが1942年に放ったヒット曲「サン=ジャンの私の恋人」"Mon amant de Saint-Jean" 発祥の地にスポットを当てていた。

 オワーズ県の小さな村、サン=ジャン=オー=ボワSaint-Jean-aux-Bois がその舞台であることをこの番組で初めて知った。
 老若男女が「サン=ジャンの私の恋人」を歌うシーンから始まる。この村にある一軒のオーベルジュ(小ホテル)にプレートが掲げられるのを祝うため、村人たちがその前に集まっていた。そのプレートにはこう書かれている。

Dans cette auberge en 1937, Emile CARRARA composa le meledie de la celebre shanson "MON AMANT DE SAINT-JEAN"(les paroles de Leon AGEL)

このオーベルジュで1937年、エミール・カラーラが有名なシャンソン「サン=ジャンの私の恋人」のメロディーを作曲した。(作詞はレオン・アジェル)

 シルクハットをかぶった村長のジャック・ルコント氏が誇らしげにインタヴューに答える姿も印象的だった。

 また、作曲者エミール・カラーラの息子、フランソワ・カラーラがこの曲が作られたいきさつを語っている。
 当時、未来の妻となるスュザンヌという女性に愛を告白したのがこのオーベルジュだったという。その燃えるような想いからこのメロディーが生まれたというわけだ。

 なかなかロマンティックなエピソードだ。もっと早く知っていれば、拙著『哀愁と歓びのシャンソンの名曲20選』(中経出版)に書くことができたのになぁ。

 17日、もうひとつ心に残るシーンに出会った。
 恵比寿ザ・ガーデンホールで行なわれた、ピエール・バルーのコンサート『航海日誌〜カルネ・ド・ボール』。
 タイトルが世界中を旅しながら出会いを求め、歌詞や映像に記録する暮らしを続けているピエールをよく表わしている。

ピエール・バルーコンサートの会場で販売されたブックレット
『航海日誌〜カルネ・ド・ボール〜』

 チンドンのミュージシャンたちが客席からステージに上がり、第1部の幕開け。といっても、幕は始めから開いているけれども。
 娘のマイア、ピエールを交え全員で「サンバ・サラヴァ」を歌う。映画『男と女』の挿入歌だ。
 マイアはヴォーカルだけでなく、フルート、テナーサックスを持ち替えて演奏も聴かせた。

 カンボジアでの出会いを収めたDVDつきのニュー・アルバム『ダルトニアン』(オーマガトキOMCX-1180)からは「クレプスキュール」が歌われた。いつまでも日が沈まないフランスの夏至の様子を歌った、きれいな曲。

 「与那国」は、ピエールがかの島で経験したディープな日本の文化や暮らしからインスパイアされたもので、ゆったりしたメロディーに癒やされる思いがする。様々な文化や音楽の融合を志す彼らしい作品だ。

 チンドンと歌ったのは「サヴァ・サヴィアン」。オリジナル・ヴァージョンでもラッパや太鼓の響きがユニークだった。その感じを再現しながら新たな要素を付け加えていた。

 第1部のトリは戸川昌子。ピエールがフェデリコ・フェリーニ監督に会わせたかった女性だそうだ。
 どうも歩き方がぎごちないなと思ったら、戸川さん、こう言った。「靴を両方とも右足のを履いちゃって」。会場は爆笑に包まれた。
 ピエール、マイアも加わって「ラスト・チャンス・キャバレー」を歌った。

 15分間の休憩を挟んで、第2部が始まる。
 キーボードを弾く高橋幸宏と歌ったのが「ル・ポレン(花粉)」。1982年、ピエールが坂本龍一、加藤和彦、清水靖晃、鈴木慶一といった日本人ミュージシャンたちと作ったアルバムのタイトル曲。
 影響を受けた人やものを“花粉”と呼び、それらから栄養を得ていまの自分たちがあるんだ、というルフランが共感を呼ぶ。

 カヒミ・カリィとのデュエットが3曲あった。「男と女」「水の中の環」「ペペ」。
 「ぺぺ」はシャンソン・フランセーズのシンガー・ソングライター、本人によれば“シャンソンのポルノ作家”ジョルジュ・ブラッサンスを取り上げている。これも82年のアルバム『ル・ポレン』に入っていた。この曲で幸宏がドラムスを叩いた。

 新譜『ダルトニアン』から表題曲をマイアとチンドンが披露。ダルトニアンは色盲を意味する単語だ。ピエール自身が色盲だということを、6月にインタヴューした際に知った。

 この語にピエールはもうひとつの意味を込めている。色盲であるとは、色の見分けがつかないということ。だから、出会う相手の肌の色が何色であろうとまるで気にしない、というのだ。いかにも心の広い彼らしい言い方だと思う。

 ラストは「出逢いの星」。原題は"Boule qui roule" で、直訳すれば「まわっているボール」で、地球のこと。スローなメロディーが夢見心地を誘う。会場でも唱和する観客たちが多かった。

 嬉しい驚きもあった。『ピアフへのオマージュ バラ色と黒の人生』にも出演した小春さんが、ザ・ガーデンホールのロビーでもアコーディオン演奏をしていたのだ。再会を喜び合った。これからが楽しみなミュージシャンだ。

 心に残るシーンの数々を、イマージュ(映像)とポエジー(詩)に記録し続けるピエール・バルー。彼もまたこの日、僕たちの心に忘れられないシーンを残してくれた。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

ムービーアイ エンタテインメント(株) 映画配給部
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目1-2 ダヴィンチ銀座ビル4F 
TEL:03-5537-0151 FAX:03-5537-0853
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ステージを終えて  9月18日(火)曇り

   

 『ピアフへのオマージュ バラ色と黒の人生』と題するコンサートで、解説者としてステージに上がる仕事をしてきた。
 24時間があっと言う間に過ぎてしまう、充実した日々だった。9月9日(日)から14日(金)までの素晴らしい時間を振り返ってみたい。

 まずは9日(日)、名古屋へ。午後1時30分過ぎにリハーサル会場の〈プティ・パリ〉に直接入る。シャンソン歌手・西山伊佐子さんが経営されているライヴ・スポット。今回のコンサートを企画されたのも西山さんだった。

 すでに、名古屋在住の女性歌手が6名顔を揃えていた。店の奥に置かれたピアノの前には、フランスからやって来たジェラール・ダゲールもいる。今年2月、シャルル・アズナヴール日本公演時には指揮者としてバンドを率いていた。
 再会を喜び合った。

 西山伊佐子さんは10年以上前、パリでジェラールと出会った。シルヴィ・ヴァルタンのコンサートを観て、彼女が歌う"Il pleut sur London"「ロンドンに雨が降る」がすっかり気に入った。で、ジェラールを楽屋に訪ねる。あいにくその日には会えなかった。後日、改めて会いに行く。

 僕は主にコンサートの第1部で4回、ステージに出てエディット・ピアフの生涯やシャンソンの背景などを語ることになっていた。僕が喋るパートは省略して、歌のリハーサルが進められた。

 夕方5時過ぎに終了。制作担当のネオ・ムスクの窪田さん、UMMサウンドシステムズの園田さんと東新町にある三井アーバンホテルにチェックイン。
 ここは〈プティ・パリ〉から歩いて目と鼻の先で、昔は金谷ホテルと呼ばれていた。荷物を置いてから下へ。西山さんに連れられて街なかへ出て、焼肉を食べた。

 食後、「もう一軒行こう」ということになり、東急ホテルのメインバーへ。窪田さん、園田さん、ピアニストの坂下文野さんと一緒にシャトー・ボリーを開けた。坂下さんは名古屋公演で第2部のピアノを担当する。
 これから毎日仕事する仲間だ。その前にこうして気心を通わせておくのは悪くない。

 10日(月)。快調に目が覚めた。昨夜、あまり飲みすぎていないのがよかった。
 朝食を摂りに1回のカフェに降りて行った。ほどなく窪田さんが現われ、園田さんも加わった。アズナヴール公演の際には照明、音響の仕込みにもフランスやカナダからスタッフが同行してしたので通訳として僕もつき合った。
 でも今回は日本人スタッフだけだから、仕込み段階で僕の出番はない。会場には午後に入ればいいと言われていた。

 部屋の清掃をして貰っている時間を利用して、外を歩くことにした。本番前に心身ともにリラックスしておくのは大事なことだから。

 2005年にも西山さんのリサイタルのお手伝いをするために、名古屋にお邪魔した。地図を頼りに、その時に泊まったホテルのある界隈を目指す。
 久屋大通りから若宮大通りへ出る。交差点の向こうに見覚えのある建物が見えた。〈ランの館〉という、洋館風のそこはジャズのライヴハウスらしい。この建物を左に見てしばらく行けば、2年前に泊まったローズコートホテルだ。

 そこまで行かず裏道に入り、目についた公園でひと休み。シャツの背中にはもうだいぶ汗をかいている。ここで涼むことにした。隣接する小学校では先生の指導の下、子供たちが同じ動きをしている様子が伝わってくる。運動会の練習か何かかもしれない。
 汗がひいてから、ゆっくりとホテルに戻った。

 午後12時30分頃には、会場の愛知県芸術劇場小ホールに入った。ここの大ホールで2月、アズナヴールがリサイタルを行なっている。NHK名古屋のすぐ裏にある、立派な造りの大きな建物だ。
 小ホールは壁面、床、椅子、ステージもすべて黒一色でまとめられている。シックな雰囲気がいい。客席数はおよそ300。ステージとの距離感も好ましい。

 初日第1部の出演者は鳥居美江さん、渡辺みかこさん。11日(火)は、かとうえい子さん、風花まいさん。12日(水)は野原百合子さん、隅田圭子さん。
 毎回、第2部では西山伊佐子さんが「愛の讃歌」を歌う。

 第2部からリハーサルが始まる。「ピアフの愛した男たち」がテーマで、イヴ・モンタン、シャルル・アズナヴール、ジルベール・ベコー、ジョルジュ・ムスタキの作品をそれぞれの歌手が歌う。

 エディット・ピアフ自身のレパートリーが歌われるのは第1部。リハーサルでは、僕も定められた曲と曲の間にステージに出て語りの練習をした。
 初めは下手に椅子と譜面台が用意されていた。椅子に腰を下ろし、譜面台に置いた台本を読む、というスタイルが想定されていた。しかし、歌手の方たちが立って歌うのに、僕だけ椅子にいるというのもどうも変だ。そこで、スタンドマイクに向かって立ったまま話すという形に変えて貰った。

 リハーサルが終了するのがおよそ午後5時前後。開場まで1時間ある。その間に楽屋弁当を食べる。自分でも不思議なほどよく食べることができた。お茶を飲んだりしながら、ゆっくりと時間を過ごす。
 6時を過ぎ、タキシードに着替える。いよいよだ。気分がおのずと引き締まってくる。

 客席が暗くなり、ピアフの歌う「私の回転木馬」がかかる。続いて彼女が観客に呼びかける挨拶が流れる。それがコンサートの始まりだった。
 続く2曲は女性歌手の方たちが歌う。名古屋・東京とも共通で、「バラ色の人生」"La vie en rose"「街に歌が流れていた」"Un refrain courait dans la rue"。

 この2曲が終わったところで僕の最初の出番が来る。それまで下手袖で待つ。
 ステージに出てすぐにいま歌われた2曲のタイトルを言う。自己紹介する。続けて、ピアフの生涯の栄光と悲惨をバラ色と黒になぞらえ、彼女を偲びながら賛辞を贈ろうというこのコンサートの趣旨を述べた。

 元来が早口なので、ステージではあまり早すぎないように心がけた。とはいっても、僕の喋りだけが長くなってしまっては進行に支障をきたしてしまう。分りやすさを意識しながらも、やや早めのテンポで話す。
 音響チーフの義煎さんにも早すぎないか、聞き取りにくくないかをリハーサルが終わる度に尋ねた。「十分に聞こえてますよ」と言ってくれた。よし、これで行こう。

 自分で書いた台本を見ながら朗読する形で話を進めた。ただし、3回目にステージに出る時は台本なし。というのは、ジェラール・ダゲールが素晴らしいシャンソンを持って来てくれていたので、彼の生の声を観客のみなさんに聴いて貰おうと思ったから。僕が彼にインタヴューする形で進めることにした。
 彼はこんなことを話してくれた。

 その曲は"Je m'en remets a toi"。直訳すれば「きみに任せるよ」「きみを頼りにしてるよ」といった意味。
 「水に流して」「私の神様」などの曲を書いたシャルル・デュモンが作曲し、ピアフに提示したらとても気に入られたという。しかし、歌詞がついていなかった。ある時、デュモンはバーでジャック・ブレルと出会う。ブレルはデュモンにそのメロディーを口ずさむように言う。それを聴いたブレルはそのバーのカウンターで一気に歌詞を書いたそうだ。
 しかし残念なことに、ピアフはこのシャンソンを歌うことなく他界してしまった。

 今夏、パリの〈オランピア劇場〉でエディット・ピアフのミュージカルが上演された。ジャック・ダルシー演出による《Piaf je t'aime》『ピアフ ジュ・テーム』。
 ピアニストのジェラールはこのミュージカルの音楽監督を務めた。主演女優のマリー・オルランディが歌っているヴァージョンを会場内に流し、それに合わせてジェラールがピアノを弾いた。マリーの力強い声による、感動的な曲調。
 終わると客席から熱い拍手が来た。
 この1曲が今回のコンサートに素晴らしい花束を添えてくれたと確信している。

 名古屋公演の3日間は夢のように過ぎて行った。
 12日、終演後〈プティ・パリ〉で打上げ。飲むほどにジェラールはゴキゲンになっていった。根っからのミュージシャンなんだなぁ。進んでピアノに向かい、弾き始める。シャルル・トレネの「喜びあり」を演奏していた時だと思う。出席者みんなが席を立ち、前の人の肩に両手をかけて室内を踊るようにまわった。
 ジェラールに促され、僕もシャンソンを歌った。陽気な鳥居美江さんとはジャヴァも踊った。いったい、何曲歌ったことだろう。気がつくとギャラリーはほとんど帰っていた。ああ、恥ずかしい。

 13日(木)、東京に戻る。いったん帰宅して着替え、東京公演のリハーサルに参加。
 コンサート会場となっている第一生命ホールの4階にあるリハーサル室へ。朝倉まみさん、有光雅子さん、深江ゆかさんが代わる代わる歌った。
 東京公演ではキーボードの砂原嘉博さん、第2部のピアニストに和田典久さんが加わる。
 そして、小春さんがクロマティック・アコーディオンで「私の回転木馬」を弾きながら場内をまわり、気分を盛り上げてくれた。18歳の有望なアコーディオニストだ。

 第2部では西山伊佐子さんが「愛の讃歌」を披露した後、「私の回転木馬」を出演歌手全員で歌った。この曲はジェラールと和田さんの連弾で楽しい雰囲気作りをする。
 歌い終わりでジェラール、和田さんに加えて僕もステージにもう一度出て整列し、フィナーレ。
 自分の喋りについては反省する点は多い。しかし、全体としてはまとまりのある、見応えのあるコンサートだったと思う。

 14日の打上げも盛り上がった。ジェラールも僕たちも離れ難い気分だった。醒めてほしくない夢。その夢をさらに長続きさせたいのでまた飲む、といった気持ちになっていた。
 これまであまり親しくお話ししたことのなかった歌手のみなさんとも改めて知り合えたことも嬉しい。

 スタッフ、出演者、そして僕を起用して下さった西山伊佐子さんに心からお礼を言いたい。楽しい経験をさせていただきありがとうございます。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

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お 知 ら せ    9月7日(金)雨

   

 台風、すごい勢いですね。
 今日は午後1時30分から銀座産経学園の講座があります。台風の影響を受けて来校できない受講生の方もいらっしゃるのではないかと、ちょっと心配です。
 授業のための準備もありますので、今日の「ひとりごと」を書く時間がありませんでした。

 もうひとつ、お知らせします。
 9月10日(月)・11日(火)・12日(水)名古屋、14日(金)と「ピアフへのオマージュ バラ色と黒の人生」というコンサートに解説者として出演します。詳細は当サイトの「情報告知板」をご参照下さい。

 9日(日)に名古屋入りして、リハーサルに臨みます。
 というわけで、来週は「ひとりごと」を書く時間的な余裕がありません。休載させていただくことをご了承願います。
 よろしくお願いいたします。

大 野 修 平

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

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ひと山越えて  9月5日(水)雨

   

 岩肌に手が伸びる。それまで表面には何もないように見えていたのに、その手の下にしっかりとしたホールド(手がかり)が、まるで生み出されたかのように出現している。
 そして、さらに高みへと足で伸び上がり、落ち着いたテンポでするすると垂直に近い岸壁の登攀を続けていく。

 いや、おそらくはそのホールドは、目立たないながらもそこにあったのだろう。それを瞬時に探り当ててしまうのは、鍛えられたアルピニストの経験に基づく勘なのかもしれない。

 そのアルピニストの名は、ガストン・レビュファ Gaston Rebuffat。
 柄にもなく山岳部に入っていた高校生の頃のこと。映画『天と地の間に』≪Entre le cielet la terre≫を山岳部の先輩や同級生たちと観て、その雄姿に憧れたものだ。
 原題はフランス語だけれど、その頃の僕にはまだ未知の言語だった。

 ポスターの絵柄をいまも憶えている。空に向かって突き出した鋭い岩峰の頂にレビュファが立っている姿がシルエットになっていた。右手にはザイル。おおまさに、天と地の間に、じゃないか。
 確かあの岩峰は、本場アルプスのエイギュイユ・デュ・ミディ(ミディ針峰)だったと思う。
 音楽は黛敏郎さんの作品と記憶している。流麗なメロディーがレビュファの登攀のテンポとよく合っているな、と思ったものだ。

 あの映画のなかで、「意あるところ、道おのずから通ず」といった言葉が出てきた。何事かを成し遂げようとする強い意志があれば道は開ける、といった意味と解している。
 何もないように見える岩肌にホールドを生み出すかに見えたレビュファの登りは、まさにそれだった。

 どうやらあの言葉は英語から来ているらしい。辞書を見たら、"There's a will, thre's a way"という表現があった。
 フランス語ではそれにぴったり合う言いまわしはないようだ。でも、こんな言い方がある。
 "Vouloir, c'est pouvoir(ヴーロワール、セ プーヴォワール)"「やろうと思えばできる」。

 オリヴィエ・ダアン監督映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』の劇場用プログラムに原稿を書く仕事にかかりきりになっていた。
 音楽、シャンソンを中心にしたピアフ像については書き上げた。続いて、ピアフの交友関係についても書くことになった。

 恰好の資料は手元にある。あれも書きたい、こんなエピソードも紹介したい。原稿を書く前にいつも感じる思いだ。しかし、何もかも書くわけにはいかない。字数制限というものがある。

 ネタが少なすぎるので文章を薄めながら書く、というのは惨めな所業でやりたくないし、やってはいけないだろう。
 僕が直面するのはたいていその逆だ。ネタはたくさんある。そのなかからどれを選ぶか、それが難しい。

 正直な話、行き詰まりかけたこともある。締め切りは否応なく迫ってくる。無力感に押しつぶされてやる気が負けそうになる。
 そんな時、友人や知人のひと言が励みとも、助けともなる。

 幸いなことに今回もそうしたひと言を得て、前に進むことができた。何もない岩肌にホールドを見つけたような気持ちだ。
 おかげでどうやらひと山越えることができたことを感謝している。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

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連なる想い  9月3日(月)晴れ

   

 「イマジン」といえば、いまは亡きジョン・レノン畢生の名曲。彼自身の弾くピアノの音色とともに、ビートルズ世代の、いやそれ以外の世代の人々の心をもいまなお揺さぶってやまない。

 イマジンという動詞は、英語で「想像する」という意味だ。ひとつの単語から次々とイメージが広がり、連なってゆく。
 幼い頃から近視だった僕は、信号機の赤・青・黄がキャンディに見えたり、空に浮かぶ黒雲をあんぱんみたいだなぁ、なんて思いめぐらしていたものだ。
 思いつくことが菓子類ばかりというのは、まぁ、子供だということでご勘弁いただきたい。
 人間の脳はそうやっていろいろなことを考えている。

 そうした思考法に似た検索法があるということを、8月20日付朝日新聞の記事で知った。もっとも、この検索サーヴィスが始まって1年が過ぎているという。
 「連想検索」という新しいテクニックだ。これまでのYahoo!やGoogleといったで検索エンジンでは、調べたい事柄に関する明解なキーワードを入力しないと望む結果を得ることができなかった。
 しかし、この「連想検索」では、入力された検索語から、それに関連する情報までを検索してくれる。

 新聞記事では「連想検索」エンジンとして、「想―IMAGINE」「reflexa」「TRIPIT」「NRI連想検索」が紹介されている。
 なかでも「想―IMAGINE」は書籍検索に特化していて、記事には「プロ野球」をキーワードに検索した結果が写真入りで説明してある。

 ほう、こいつは面白そうだ。さっそく試してみたくてたまらなくなってくる。
 で、やってみました、国立情報科学研究所が開発した「想―IMAGINE」。もちろん、検索語は「シャンソン」で。

 出てきた画面の一番左は「新書マップ」。新書・選書から1000のテーマに沿って検索される。「シャンソン」で検索すると、フランス語関連の新書がずらりと並んだ。興味深いのは、それぞれの新書の背表紙がこちらを向いている写真が添えられていること。後で書店で探す時に便利だ。

 その隣には"Webcat Plus" 。これも連想機能を活用して、全国1000の大学図書館の本棚から調べてくれる。
 一番右は"Wikipedia"。インターネット上のフリー百科事典に関連した記述があるかどうかを探してくれるというわけ。他にも検索オプションが用意されている。

 「新書マップ」にはシャンソン関係の本はヒットしない。そんな本はいまのところ出ていないんだから仕方ない。
 でも案ずるには及ばない。次の"Webcat Plus"がすでに検索を済ませてくれているから、そちらを見ればいい。

 探している本のタイトルが見つからなければ、"MORE" をクリックして下へスクロール。
 僕の本も下のほうにあった。それを上に持ってきて、画面をキャプチャしてみた。初めて「想―IMAGINE」を使った記念写真という気分で。

「想―IMAGINE」で見つけた僕の本

 アンダーラインが引かれた本のタイトル部分をクリックすると、さらに詳しい情報を参照できる。出版社名、発行年月日、ページ数などきめ細かく表示される。

 資料探しにも使える、スグレモノの検索エンジンだと思う。調べたいことの周辺まで拾い出してくれるんだから、便利この上ない。
 こうしたテクノロジーはまさにインターネットのいいところだ。闇サイトなんていうのは困りものけれども。

 「連想検索」というツールによって、コンピュータがまた少し人間に近づいたような気がする。メカに強くない僕でも使えるのでほっとする。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

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『シャルル・アズナヴール/ベスト・ソングス&ライヴ』
      (東芝EMI TOCP-70188/89 2枚組)

CD1:ベスト・オブ・スタジオ
〈曲目〉1.コメディアン 2.希望に満ちて 3.想い出をみつめて 4.遠い想い出 5.昔気質の恋 6.フォー・ミー、フォルミダブル 7.ラ・マンマ 8.悲しみのヴェニス 9.ラ・ボエーム 10.これからは 11.人々の言うように 12.誰 13.想い出の瞳 14.時 15.私は旅する 16.生ける屍〜『言論犯罪』〜 17.きみが僕を愛する時 18.ユー・メイク・ミー・ソー・ヤング(フランク・シナトラとのデュエット曲) 19.少年がいた 20.世界の果てに

CD2: ベスト・オブ・ライヴ・オランピア
〈曲目〉1.それがわかれば 2.八月のパリ 3.すべては終わり 4.青春という宝〜帰り来ぬ青春 5.僕は戻ってくる 6.愚かな恋 7.燃えつきて 8.僕の肩でお泣き 9.ジャム・セッションのために 10.愛のあとで 11.生命をかけて 12.青春の思い出 13.二つのギター 14.戦いの前に 15.生きる喜び 16.声のない恋 17.きみの思い出 18.灯りを消して 19.のらくらもの 20.アヴェ・マリア

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お  知  ら  せ

詳細は10月25日付本欄をご参照願います。

イングリッド・ベタンクールかけポスター

 国際イングリッド・ベタンクール連盟委員会が全世界的に幅広い支援を呼びかけています。詳細はサイトhttp://www.educweb.org/Ingrid/をご覧下さい。日本語でも読むことができます。

 サイトhttp://www.ingridbetancourt-idf.com/otages/にも注目して下さい。画面右にある"Telechargement"(テレシャルジュマン=ダウンロード)から、イングリッドのポスターをダウンロードできるようになっています。この「お知らせ」欄に掲げた写真と同じものです。

 同じページを下方へスクロールしていくと、左側に写真が縦に並べられています。いろいろなドキュメントを見ることができます。
 上から5番目に"Allumez une bougie"「ローソクを灯して」という項目があります。写真をクリックすると、多くのローソクが並ぶ画面になります。一番下にあるローソクの絵をクリックしてみましょう。その絵が動いてすでに光を放っている列に向かって進んで行きます。
 これで、ヴァーチャルなローソクを1本灯したことになるのです。

イングリッド・ベタンクール解放を訴えるシャンソンたち

 囚われの身となっているイングリッドやその他の人々の解放を歌うことを通して呼びかけているアーティストたちがいます。

 ☆ルノー Renaud 《Dans la jungle》「ジャングルのなかで」(EMI 09463 494690 2)
サイトhttp://www.educweb.org/Ingrid/ からインストゥルメンタル・ヴァージョンをダウンロードできます。

 ☆セシレム Cecilem ピアノを弾きながら歌う女性歌手セシレムが"Chanson pour Ingrid" を歌っています。Emexのサイトからmp3形式でダウンロードできます。

http://emex-music.com/cecilem/

http://www.emex-music.com

歌を聴きながら、イングリッドと人質の方々を支援しましょう。


♪Petites annonces♪

☆『ディア・ピアフ ベスト・オブ・エディット・ピアフ』
(東芝EMI TOCP-67296)

ピアフを敬愛するアーティストたちがセレクトした11曲を含む珠玉のベスト・アルバム。
「恋人が一輪の花をくれた」石井好子 撰/「バラ色の人生」椎名林檎 撰/「パリの空の下」小野リサ 撰/「いつかの二人」クレモンティーヌ 撰/「水に流して」中島みゆき 撰 他全20曲、【解説】大野修平。


♪Petites annonces♪
おすすめシャンソン・フランセーズCD&DVD
(対訳または解説:大野修平)
   
東芝EMI
BMGファンハウス
『シャンソン名曲大全集』
Le florilege de la Chanson Francaise
(GSD-13601〜10/BCD-0094 CD10枚組)
『魅惑のシャンソン名曲集
 〜Vive la Chanson!〜』
TheCDClub
(EMI ODEON FFCP-41710〜1 CD2枚組)
パトリック・ブリュエル
『アントゥル=ドゥ』
(BVCM 34015〜16 CD2枚組)
☆このCDについての詳細は当サイト「ディスクガイド」をご参照下さい。
ユニバーサル・ミュージック・ジャパン
オーマガトキ

ジャック・ブレル
『ベスト・オブ・ジャック・ブレル Brel Infiniment Jacques Brel』
(UICY-9450)

アンリ・サルヴァドール
『ベスト・オブ・アンリ・サルヴァドール』
Henri Salvador Henri Salvador
(CD2枚組 UICY-1258/9)

『アコーデオン』
(DVD OMBX-1004)
[監督]ピエール・バルー
[出演]リシャール・ガリアーノ/タラフ・ドゥ・ハイドゥークス/クロポルト/ダニエル・ミル/モーリス・ヴァンデール/シブーカ/クロード・ヌガロ/coba/続木力/深川和美/まや他