いま、ポエジーのある歌が聴きたい!
大野修平著 『わが心のシャンソン 〜 そして詩人の魂をめぐって』

平凡社刊 定価:1575円[税込]全国の書店で好評発売中。

大野修平が出会った歌手とシャンソンたち。原詞と対訳を掲げてその魅力を探る。
〈収録アーティスト〉シャルル・トレネ/イヴ・モンタン/フランシス・ルマルク/レオ・フェレ/コラ・ヴォケール/セルジュ・ゲンズブール/ジャンヌ・モロー/ジャック・ブレル/ジョルジュ・ブラッサンス/ピエール・バルー/ジュリエット・グレコ/ジョルジュ・ムスタキ/ジルベール・ベコー/エディット・ピアフ/シャルル・アズナヴール そして21世紀のシャンソン歌手たち。


大野修平、最新の書き下ろしが刊行されました。
どうぞ書店でお手に取ってご覧下さい。

『哀愁と歓びのシャンソンの名曲20選〔CD付〕』
(中経出版)¥1,800

シャンソン関連のコラム、シャンソンゆかりの場所を示した
パリのイラスト地図も入ってます。
よろしかったらご感想やご意見をメールなどでお寄せ下さい。

◇ お 知 ら せ ◇
 大野修平が講師を担当する「シャンソン de フランス語」が始まりました。インターネットでフランス語のレッスンができます。ご利用には料金がかかりませんのでお気軽にどうぞ。
動画レッスンURL:http://www.unself.jp/
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心づくしの秋(承前)  11月2日(金)曇り

   

 時折、筋を追って本を読むのが面倒になることがある。身体が疲れていたり、心が萎えていたりする時にそんな気分になる。
 そういう時でも、本を手に取ってしまう。性(さが)というものだろうか。論理的な文章は頭に入らないので、引用語辞典などが手頃だ。

 フランスで出ている≪Dictionnaire des citations du monde entier≫『全世界引用語辞典』(marabout, 1978)のページを繰ることが多い。著者はベルギー、モンス生まれのカルル・プティ Karl Petit。
 引用されている人物のなかにはフランス、イギリス、アメリカ、ドイツなどの作家、詩人、哲学者に交じって、日本の文学者たちの名前も数多く見受けられる。

 試みに拾い出してみよう。柿本人麻呂、清少納言、紫式部、僧正遍照、松尾芭蕉、向井去来、岡倉覚三(天心)、夏目漱石、三木露風…。
 時々、表記が怪しげな場合もある。村野四郎が"Marano Shiro"、堀口大學が"Herigichi Daigaku"、服部嵐雪が"Hattori Rantsetsu"と誤記されている。校正時に見逃したものだろうか。

 『万葉集』や『古今和歌集』にも言及している。よくもまぁ、これだけ目配りが行き届いているもんだなぁ、と思って著者紹介を読んでみた。著者のカルル・プティはジャーナリストであり、文献学者。この本が刊行された1978年当時、すでに25年の長きにわたって日本文学を読み、魅了されてきたとある。
 なるほど、日本人作家の引用が多いのも頷ける。

 「ポエジー」"Poesie"=「詩」の項を拾い読みしていたら、紀貫之の言葉が真っ先に収録されているのに出くわした。ちょっと引いてみよう。

Le temps a beau aller ses etapes, les choses passer, les joies et les tristesses croiser leurs routes; quand le rythme est la, comment la Poesie pourrait-elleperir?
Ki no Tsurayuki, Preface au Kokinnshu

 紀貫之が書いた『古今集』仮名序文の末尾近い箇所のフランス語訳だ。これを日本語に移し替えてみると―

時がその行程を進んで行き、物事が去り、喜びや悲しみが行き交ったとしても何になろう。律動がそこにあるならば、ポエジー(詩)が色褪せることなどあろうか。

 「明晰ならざるものフランス語にあらず」"Qui n'est pas clair, n'est pas le francais" と言われるとおり、実に明解な訳になっている。

 普段、僕はフランス語の原文を日本語に翻訳することが多いのだけれど、こうした逆のケースにも大いに興味がある。いったい、どのように訳しているんだろう、と思ってしまうのだ。
 それを探るためにも貫之が書いた原文と比べてみよう。

たとひ時うつり事さり、たのしびかなしびゆきかふとも、この歌のもじあるをや。

 これを現代語訳すれば「たとえ時が過ぎ世の物事が過去になり、楽しいこと、悲しいこと、いろいろ過ぎて行ったにしても歌は存在し続けるだろう」といった意味になる。フランス語訳にある「律動」le rythme なる語は見当たらないけれど、詩を成り立たせるためにはリズムは重要な要素であることは疑いを容れない。

 ところがこのリズムという奴が曲者。その国語に特有なものなので、リズムまで訳に活かすとなると四苦八苦する羽目に陥る。
 この『引用語辞典』を編んだカルル・プティが小野小町の名歌に挑んだ跡を見てみよう。

En pensant a lui,
Je me suis endormie,
Mais je l'ai vu aussitot.
Ah! si j'avais su que c'etait un reve,
Jamais je ne me fusse reveillee.

 このフランス語訳は「夢」の項目に採られている。これを日本語に訳しなおしてみるとこうなる。

あの人のことを考えながら
私は眠り込んでしまった
しかし、私はあの人を再び見かけた
ああ、それが夢と知っていたならば
目を醒ますことなどしなかったものを

 『古今和歌集』巻第十二、恋歌二の巻頭に収められた小町の原詩を掲げる。

おもいひつつぬればや人のみえつらむ夢としりせばさめざらましを

 あえて現代語を掲げておこう。「恋しい想いを抱いて寝入ったのであの人が姿を現わしたのだろうか。夢と知っていたなら目が醒めないようにしたであろうに」。最後の箇所は「目を醒まさなかったであろうに」とも解し得る。

 言うまでもなく、五七五七七の三一文字で詠まれている。これが和歌のリズムだ。プティのフランス語訳を見る。各行のシラブル数を数えると詩のリズムが明らかとなる。

 第1行目が五、第2行目が六、第3行目は八、第4行目は十一、最終行は十。総計で四十になっている。三十一音より九つ多い。
 歌の意味は完璧に翻訳されているのは明瞭だ。しかし五七五七七のリズムには収まりきれていない。フランス語訳にケチをつけるつもりはないけれど、元の和歌の説明文に近いものになっていると言えよう。

 ことほどさように、ある国語に固有のリズムを他の国語に移し替えるのは容易な業ではないのだ。このケースと逆の難行苦行をずっと繰り返してきたので、痛いほど解る。

 この「おもひつつ」に続いて、『古今集』では「夢」を詠んだ歌がさらに二首続く。小野小町による夢三部作とでも呼びたい、いずれ劣らぬ名歌だからついでに掲げておこう。

うたたねに戀しき人を見てしより夢てふ物はたのみそめてき

 「うたたねをして恋しい人の姿を見た。その時から、夢を頼みと思うようになってしまった」と、前の歌を受けて詠んでいるように思える。

 もう一首。

いとせめて戀しき時はむばたまの夜の衣をかへしてぞきる

 「いとせめて」は「どうにもならぬほど」という意味。歌の現代語訳は「どうにもならぬほど恋しい時には、夜の衣を裏返しに着るのです」。
 古来、夜の着物を裏返しに身にまとうと夢のなかで恋人に会えるという俗信があったという。

 カルル・プティの『引用語辞典』には残念ながら、これら二首のフランス語訳は載っていない。日本語のリズムを移すことの難しさに手こずったものだろうか。
 ならば僕自身で訳してみようかなとも思うけれど、そう簡単にいきそうにないなぁ。
 そんなことに思い悩む、僕の「心づくしの秋」は終わりそうにない。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

ムービーアイ エンタテインメント(株) 映画配給部
〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目1-2 ダヴィンチ銀座ビル4F 
TEL:03-5537-0151 FAX:03-5537-0853
http://www.movie-eye.com
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(C)2007 LEGENDE-TF1 INTERNATIONAL-TF1 FILMS PRODUCTION
OKKO PRODUCTION s.r.o.- SONGBIRD PICTURES LIMITED

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心づくしの秋  10月31日(水)晴れ

   

 このところ過ごしやすい天気が続いている。冷涼な大気が、あの猛暑で疲れた身と心を癒してくれるかのようだ。

 どこかの家の庭で物を燃やしている。爽やかな風に乗って漂ってくる煙に排気ガスのような不快感を覚えない。暑いさなかだったら煙たさが先に立って、むせ返ってしまうところだろう。

 この時期、とりわけ夕刻から夜にかけて心はちょっぴり詩人めいてくる。取り立てて悲しいことが身のまわりに起こったわけでもないのに、何となく寂しい気分が湧いてくるのはどうしたわけだろう。

 夜空を仰げば月が目に入る。
 先週金曜日、26日が満月だった。いまは右半分が欠けてきている。宵月と呼ぶらしい。
 満月だけが美しいわけではない。満ちたり欠けたりする姿もまた十分に観賞に堪える。

 桜の花や紅葉に心を動かされる。そんな時、日本的な感性がまだ自分のなかに息づいているのを強く感じる。
 秋。そこはかとない寂しさが心に広がる時、『古今和歌集』のよみ人しらずの一首が思い出される。

このまよりもりくる月のかげみれば心づくしの秋はきにけり

 「心づくしの秋」という言葉が好きだ。
 心づくしとは、様々に物思いすること、気を揉ませられること。物思いに耽って心を悩ます秋をうまく言い当てた表現だ。
 木々の間から洩れて来る月の光を見ていると、物思いの限りを尽くす秋が来たんだなぁ、とつくづく感じる。この歌の作者はそう歌ったのだ。

 この作品のすぐそばに、同じくよみ人しらずのこういう歌も置かれている。

物ごとに秋ぞかなしきもみぢつつうつろひゆくをかぎりと思へば

 紅葉してそれが衰えていけば、それで秋も終わりになってしまう、という感慨。「もみぢつつうつろひゆく」という物言いが新鮮な感じを与えているように僕には思える。

 『古今和歌集』のスターといえば紀貫之、凡河内躬恒、在原業平、小野小町といった名前が思い浮かぶ。しかし、よみ人しらずの歌もまた光っていることを忘れてはならないだろう。
 秋の風情を強調する紅葉の歌を、さらによみ人しらずの作品に探ってみよう。

秋かぜにあへずちりぬるもみぢばのゆくへさだめぬ我ぞかなしき

 吹いて来る秋風に耐えることができず、はかなくどこへともなく散ってゆく紅葉にみずからの姿を重ねている。
 これ、まさに「秋の日の ヴィオロンの ためいきの…」で始まる、ポール・ヴェルレーヌ作「秋の歌」"Chanson d'automne" の世界じゃありませんか。上田敏の名調子を原詩とともに引いておこう。

げにわれは
うらぶれて
 ここかしこ
さだめなく
とびちらふ
 落葉かな

Et je m'en vais
Au vent mauvais
 Qui m'emporte
Deca, dela,
Pareil a la
 Feuille morte

 さらにTete(テテ)の"A la faveur de l'automne"(「ア・ラ・ファヴール・ドゥ・ロートンヌ」)を併せて聴けば、心づくしの秋を満喫できるだろう。
 この曲について「これほど深い秋の歌がこれまであったろうか」(『ポップ・フランセーズ 名曲101徹底ガイド』p.245)と書く、向風三郎さんともフィーリングを共有できるだろう。

 そして、散りゆくもみじの葉は地面に積もる。再びよみ人しらずの歌に耳をすましてみよう。

秋はきぬもみぢはやどにふりしきぬ道ふみわけてとふ人はなし

 秋が来てわが家の周囲に紅葉が散り積もる。その葉を踏み分けて訪ねて来る人もない。赤や黄に色づいた葉の堆積と対になった静けさ。その沈黙のなかに広がる孤独感と寂しさが、ぐっと読む者の胸に迫ってくる。
 心づくしの秋はあくまで物悲しい。

                 a suivre... (つづく)

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

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ポップ・フランセーズの名ガイドブック登場 10月29日(月)晴れ

   

 向風三郎さんの著書が出た。
 タイトルは『ポップ・フランセーズ 名曲101徹底ガイド フランスは愛と自由を歌い続ける』(音楽出版社)。CDジャーナルムックの1冊として刊行された。

『ポップ・フランセーズ 名曲101徹底ガイド フランスは愛と自由を歌い続ける』(音楽出版社)

 シャンソン・フランセーズやポップスのCDも、フランスのショップではたいてい「ヴァリエテ・フランセーズ」"Varietes francaises" という棚に分類されている。
 ところが、この“ヴァリエテ”という単語にはしばしば侮蔑的なニュアンスが込められることがある。向風さんはそうした誤解を招くのを避けたかったのだろう。

 シャンソン・フランセーズとはやや趣を異にする、1960年代以降のフランスのポップ・ミュージックを向風さんは“ポップ・フランセーズ”と名づけた。
 1968年5月の「五月革命」を経験した世代を"soixante-huitard"(ソワサント=ユイタール)と呼ぶ。学生運動からゼネストに発展したこの変革のうねりを深く胸に刻んだ向風さんが、この年の動向から筆を起こしているのは頷ける。彼もまた、まぎれもないソワサント=ユイタールのひとりなのだ。

 向風さんは「五月革命」と1981年のFM電波自由化をフランスの音楽における二大転機ととらえる。ロック、ポップ、パンク、ディスコなど世界的な音楽傾向の影響を受けた70年代、80年代から、2007年までのフランスのポピュラー・ミュージックを概観するのがこの本だ。
 それはフランス現代史の一側面であり、またパリに30年以上住む向風さんの個人史とも重なっている。

 というわけで、68年5月を象徴する歌ともなった、ジュリアン・クレールの「騎兵」からポップ・フランセーズのガイドは始まる。
 続いてピエール・バルー作詞、フランシス・レイ作曲による「自転車」。歌ったのはイヴ・モンタンだった。ゼネストで地下鉄などの乗り物が停止した際にパリ市民の足となったのが自転車だったことにも触れる。

 このガイドブックはシャンソン・フランセーズをこよなく愛する僕のような人間にも親切に作られている。
 モンタンに限らず、ジョルジュ・ムスタキ「異国の人」、バルバラ「黒いワシ」、レオ・フェレ「セ・テクストラ」、シャルル・アズナヴール「人々の言うように」、ジルベール・ベコー「孤独は存在しない」、ジャック・ブレル「マルキーズ諸島」といったシャンソン歌手とその作品にも目を向けているから。
 それぞれの楽曲へのコメントも向風さんらしい鋭い感性が光る。なかには異を唱えたくなる意見もなくはないけれども。

 イエイエは1960年代始めからフランスの若者たちを魅了した、英米のロックンロールやポップスに影響を受けた音楽だった。これまで僕はミッシェル・ポルナレフの登場をもってイエイエは終わった、と解釈していた。
 向風さんは別の見解を示している。1978年3月、クロード・フランソワの死をもってイエイエの終焉ととらえるのだ。なるほど、卓見だと思う。

 北フランスの炭鉱労働者たちを歌ったピエール・バシュレの「炭鉱長屋」。アラブ移民第二世代の息子たちが結成したカルト・ド・セジュール(滞在許可証の意)による「ホホマニ」('84)。喜劇役者コリューシュとジャン=ジャック・ゴールドマンが発足させた「心のレストラン」('86)…。
 こうした社会的な歌を取り上げる時の向風さんの思考は深い。人間的な優しさも滲み出ている。

 2000年代に入ってからのアーティストへの言及もある。
 アンリ・サルヴァドール「冬の温室」に始まって、スーアド・マッシ「私には時間がない」('01)、カルラ・ブルーニ「風のうわさ」('02)、テテ「秋に味方して」('03)、ラファエル「キャラヴァン」('05)からクリストフ・ウィレム「二重人格」('07)まで、多彩な顔ぶれ。

 いまを生きる人々が共有する音楽であるポップ・フランセーズの多種多様さを、向風さんはエネルギッシュに語り続ける。頼もしい限りだ。
 しかし、安易なヒット曲ガイドではないのがこの本の興味深いところ。たとえばジャン・ギャバンのヒット曲「マントナン・ジュ・セ」(いま私には分る、といった意味)の項。
 若い頃には何でも「分ってるさ」「知ってるよ」と繰り返してきたこの歌の主人公が、60歳を過ぎてしみじみと述懐する。「いま私には分る。人は決して分り得ないのだ」。

 人間の営みを深く洞察したジャン=ルー・ダバディのこの歌詞、シャンソン・フランセーズと考えてもおかしくない内容と風格を備えている。渋い声で歌っているのが名優ジャン・ギャバンなのだから、なおさらその趣が濃厚だ。
 向風さんはこうコメントをつけている。「子供たちに簡単にわかってもらっては困るのだ」。(p.75)

 こういう骨っぽい信念を持って書かれたポップ・フランセーズのガイドブック、シャンソン・フランセーズ好きが読んでもかなり楽しめることは請け合いだ。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

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『広辞苑』が変わるんだって  10月26日(金)雨

   

 24日付の朝日新聞社会面の見出しに惹きつけられた。
 「広辞苑めっちゃ変身」。来年1月に発売される、日本を代表する辞書『広辞苑』第6版についての中村真理子記者による記事だ。
 新しく収録された単語の一例として「めっちゃ」を見出しに使っているのだった。

 記事によると、第6版の宣伝戦略としてユニクロと組んで広辞苑Tシャツなるものまで売り出すという。『広辞苑』発売元の岩波書店というと、お堅いイメージの強い出版社だけれど、ここへ来て“めっちゃ”頑張ってるみたい。

 朝日の記事にも新たに収録された単語の一部の意味が表になって出ている。「ニート」「メタボリック」「いけ面」「ウルトラマン」…。
 では、これ以外にはどんな単語があの分厚い辞書の仲間入りしているんだろうか。気になったので、岩波書店のサイト(http://www.iwanami.co.jp/)を覗いてみた。

 そこからいくつか引用させていただくと―
 [現代語]いいとこどり/癒し系/逆切れ/さくっと/食育/うざい/らしくない/中食(なかしょく)etc.
 [カタカナ語]カミングアウト/ユビキタス/デパ地下/ネットサーフィン/パワーハラスメント/パワーハラスメント/スローフード/メル友 etc.
 サイトには他にも、[人文・社会][自然・人間][科学・技術][人物]といったジャンルから新しく採られた単語が並んでいる。

 言葉は日々変わってゆく。それを押し留めることはできない。時代に即した有効性を持つことも辞書には求められよう。特に『広辞苑』はミニ百科事典といった趣も備えた辞書だから、単なる国語辞典以上の内容があって然るべきだと思う。
 ただ、余計なお世話を承知で言わせて貰えば、『広辞苑』は『現代用語の基礎知識』に寄り添うこともないような気もするなぁ。

 以前も書いたことがあるけれど、僕が持っている『広辞苑』は第2版。1973年発行の第7刷で、定価3,600円と奥付にある。これを神田の古本屋で買い求めたのは大学生の時だった。
 それ以来、買い替えていない。手に馴染んだ辞書はなかなか捨てられないものだ。新語は他に調べる手立てだってあるから、ずっとこれを使ってきた。

 第6版の定価は8,400円。来年6月30日までは7,875円という特別価格で販売するという。どうしようかな。
 というのも、この6月にノートパソコンを買い替えた時にCD―ROMがオマケでついてきたから。それには『広辞苑 第5版』『現代用語の基礎知識 2007年版』『学研パーソナル統合辞典』が収録されている。何しろ薄い、軽いという物理的な点が違う。

 それに、『広辞苑』ひとつとってみても、「図・写真」「動画」「色見本」などといったマルチメディアデータも含まれている。「鳥の鳴き声」なんて、紙の辞書では味わえない楽しさがある。
 第6版にももちろん、CD―ROMヴァージョンが用意されている。でも、当分は手持ちのCD―ROMで間に合わせることができそうだ。

 紙の辞書か、CD―ROMかといった二者択一に引き裂かれる必要もないだろう。重たい辞書のページを繰りながら言葉の肌ざわりを楽しむもよし、キーボードを叩くついでにCD―ROMの辞書から言葉の意味を取り出すのもまた一興。
 肝腎なのは、辞書を引く人の言葉を大切に扱う心だと考える。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

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偽ったり、隠したり  10月24日(水)晴れ

   

 呆れてものが言えないとはこのことだろう。
 来る日も来る日も報道される、企業や政府省庁などによる偽装、情報の隠蔽工作の数々。

 柄にもなく演歌の一節を思い出した。その昔、鶴田浩二が歌った「傷だらけの人生」(作詞:藤田まさと、作曲:吉田正)の1番の歌詞。「右を向いても左を見ても ばかと阿呆のからみあい」。

 「白い恋人」製造元の腹は黒かった。「赤福」の餅と餡は真っ赤な嘘で作られていた。「名古屋コーチン」も「比内鶏」もブランド名が泣いている。
 消費者の健康なんてまるで考えてない。頭にあるのは自社の儲けだけ、省庁の利益だけ。
 自分さえよければそれでいいい、という考え方がどうしてここまで日本人の心を蝕むようになってしまったんだろうか。情けない。

 「鳥なき里のコウモリ」という言い方がある。
 鳥がいない里では、コウモリが「俺は鳥だ」という顔をして飛んでいても誰も疑わない。だって、空を飛んでいるのはコウモリだけなんだから。

 しかし、そんな里にいったん鳥が飛来したら、たちどころにコウモリが鳥ではないことが明らかになる。その時コウモリはどんな顔をするんだろうか。赤くなっていたとしても、黒いので外からは分らないかな。
 似て非なるもののたとえとして、興味深い示唆を与えてくれる表現だ。

 世界に誇るべき歴史と伝統を持つ日本。そこに巣食うひと握りのコウモリどもがみずからを鳥と偽り、恥知らずにも跳梁跋扈している。嘆かわしい状況だ。
 だからといって、そんなコウモリどもだけがこの国の空を独り占めしているわけじゃないことは僕も心得ている。嘘偽りのない、まっとうな経営を通じて消費者に奉仕する立派な企業だってある。

 ただ、そうしたまともな経営者たちまでが、憎むべきコウモリどもによって姿を隠されてしまいかねないことが怖い。そう、「悪貨は良貨を駆逐する」と言うではないか。

 僕たちも派手な宣伝文句などに踊らされて偽装された商品をつかまされることのないよう、常に目を醒ましていなければならないだろう。
 それにも増して、みずからへの戒めとして考えることがある。まずは自分自身が「鳥なき里のコウモリ」みたいな、真実を偽ったり隠したりするインチキな存在になってはいけない、と。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
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秋の午後のひととき  10月22日(月)晴れ

   

 ここ数日、咽喉が痛い。扁桃腺が腫れているせいだ。
 暑い、暑いと思っていたのが急に涼しくなったころもあって、ちょいと油断したのが原因らしい。咽喉そのものはしょっちゅうアルコールで消毒しているはずなんだけどなぁ…。

 昨日の日曜日、楽しい秋の午後のひとときを過ごした。
 銀座産経学園で僕が担当している講座「シャンソンのベル・エポック」の受講生である、磯貝幸枝さんが新橋シャミオールでライヴを行なったのだ。

 JR新橋駅にほど近いシャミオールに来るのはほんとに久しぶりだ。店の入っているビルの場所を思い出すまで、ほんの一瞬迷ってしまった。と、向こうから受講生のYさんがやって来るのに出くわした。一緒にビルを見つけて3階へ。

 開演時間の午後4時少し前、店内はお客様でいっぱい。磯貝さんの幅広い人脈を感じさせる。
 銀座産経学園の親睦会である「さくらんぼの会」メンバーが集まっているコーナーへ。顔見知りの人たちに囲まれていると、やはり気が休まるというものだ。

 第1部、第2部とも9曲ずつの予定曲を書いたプログラムを受付で手渡されていた。上里知己さんのピアノ伴奏で、その曲順どおりに歌い進めていった。
 磯貝さんは背が高く姿勢がいいので、ステージで見栄えがする。選ぶシャンソンに関するも姿勢もいい。すっきりと筋が一本通っているように感じる。

 「ロマンス」"Romance" に続いて、アンリ・サルヴァドールの"Jardin d'hiver"(「こもれびの庭」)をフランス語でテンポ良く歌う。新しい曲への目配りが効いている。
 「あまい囁き」"Paroles, paroles" では磯貝さんのフランス語の師匠、梅原英正さんと息の合ったデュエットを聞かせた。

 シャルル・アズナヴールの「フォー・ミー、フォルミダブル」"For me, formidable" で第1部を締めくくった。

 第2部はレオ・フェレの「愛する時」"On s'aimera" から始まった。
 「ピカルディーのバラ」"Rose de Picardie" は日本語訳詞で。間奏では少しダンスするような仕草を見せながら後ろを向いた。いい雰囲気を出して歌っていたのだから、踊るか、じっと客席に背を向けるかどちらかにした方がより効果的だったのではないだろうか。

 第2部もアズナヴールの「恋は一日のように」"L'amour c'est comme un jour" がラストに選ばれていた。今年の来日公演時に着物姿で楽屋を訪れたエピソードも披露していたから、磯貝さんにとってアズナヴールのレパートリーは大切なのだろうと思わせる。

 僕はもう少し「恋は一日のように」の余韻を味わいたかったのだけれど、お客様たちが早々とアンコールを促す拍手をしていた。「恋は…」の歌い終わりでいったんステージからハケれば、もっとメリハリがついたように思える。

 アンコールは「シラキューズ」"Syracuse"。これまたアンリ・サルヴァドールの名曲。もう1曲はアダモの「明日は月の上で」"A demain sur la lune"。客席から手拍子も出て、和やかな気分が広がった。
 全体にトークを控えたことには好感が持てた。あくまで曲をメインに据える方が望ましいと思われるから。

 楽しい秋の午後のひとときを過ごして外に出ると、もうあたりは暗い。冬を予感させる冷気が身を包んだけれど、心は温かいままだった。

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エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜
配給:ムービーアイ 今秋、有楽座ほか全国ロードショー!

エディット・ピアフを彷彿とさせるマリオン・コティヤール

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『シャルル・アズナヴール/ベスト・ソングス&ライヴ』
      (東芝EMI TOCP-70188/89 2枚組)

CD1:ベスト・オブ・スタジオ
〈曲目〉1.コメディアン 2.希望に満ちて 3.想い出をみつめて 4.遠い想い出 5.昔気質の恋 6.フォー・ミー、フォルミダブル 7.ラ・マンマ 8.悲しみのヴェニス 9.ラ・ボエーム 10.これからは 11.人々の言うように 12.誰 13.想い出の瞳 14.時 15.私は旅する 16.生ける屍〜『言論犯罪』〜 17.きみが僕を愛する時 18.ユー・メイク・ミー・ソー・ヤング(フランク・シナトラとのデュエット曲) 19.少年がいた 20.世界の果てに

CD2: ベスト・オブ・ライヴ・オランピア
〈曲目〉1.それがわかれば 2.八月のパリ 3.すべては終わり 4.青春という宝〜帰り来ぬ青春 5.僕は戻ってくる 6.愚かな恋 7.燃えつきて 8.僕の肩でお泣き 9.ジャム・セッションのために 10.愛のあとで 11.生命をかけて 12.青春の思い出 13.二つのギター 14.戦いの前に 15.生きる喜び 16.声のない恋 17.きみの思い出 18.灯りを消して 19.のらくらもの 20.アヴェ・マリア

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お  知  ら  せ

詳細は10月25日付本欄をご参照願います。

イングリッド・ベタンクールかけポスター

 国際イングリッド・ベタンクール連盟委員会が全世界的に幅広い支援を呼びかけています。詳細はサイトhttp://www.educweb.org/Ingrid/をご覧下さい。日本語でも読むことができます。

 サイトhttp://www.ingridbetancourt-idf.com/otages/にも注目して下さい。画面右にある"Telechargement"(テレシャルジュマン=ダウンロード)から、イングリッドのポスターをダウンロードできるようになっています。この「お知らせ」欄に掲げた写真と同じものです。

 同じページを下方へスクロールしていくと、左側に写真が縦に並べられています。いろいろなドキュメントを見ることができます。
 上から5番目に"Allumez une bougie"「ローソクを灯して」という項目があります。写真をクリックすると、多くのローソクが並ぶ画面になります。一番下にあるローソクの絵をクリックしてみましょう。その絵が動いてすでに光を放っている列に向かって進んで行きます。
 これで、ヴァーチャルなローソクを1本灯したことになるのです。

イングリッド・ベタンクール解放を訴えるシャンソンたち

 囚われの身となっているイングリッドやその他の人々の解放を歌うことを通して呼びかけているアーティストたちがいます。

 ☆ルノー Renaud 《Dans la jungle》「ジャングルのなかで」(EMI 09463 494690 2)
サイトhttp://www.educweb.org/Ingrid/ からインストゥルメンタル・ヴァージョンをダウンロードできます。

 ☆セシレム Cecilem ピアノを弾きながら歌う女性歌手セシレムが"Chanson pour Ingrid" を歌っています。Emexのサイトからmp3形式でダウンロードできます。

http://emex-music.com/cecilem/

http://www.emex-music.com

歌を聴きながら、イングリッドと人質の方々を支援しましょう。


♪Petites annonces♪

☆『ディア・ピアフ ベスト・オブ・エディット・ピアフ』
(東芝EMI TOCP-67296)

ピアフを敬愛するアーティストたちがセレクトした11曲を含む珠玉のベスト・アルバム。
「恋人が一輪の花をくれた」石井好子 撰/「バラ色の人生」椎名林檎 撰/「パリの空の下」小野リサ 撰/「いつかの二人」クレモンティーヌ 撰/「水に流して」中島みゆき 撰 他全20曲、【解説】大野修平。


♪Petites annonces♪
おすすめシャンソン・フランセーズCD&DVD
(対訳または解説:大野修平)
   
東芝EMI
BMGファンハウス
『シャンソン名曲大全集』
Le florilege de la Chanson Francaise
(GSD-13601〜10/BCD-0094 CD10枚組)
『魅惑のシャンソン名曲集
 〜Vive la Chanson!〜』
TheCDClub
(EMI ODEON FFCP-41710〜1 CD2枚組)
パトリック・ブリュエル
『アントゥル=ドゥ』
(BVCM 34015〜16 CD2枚組)
☆このCDについての詳細は当サイト「ディスクガイド」をご参照下さい。
ユニバーサル・ミュージック・ジャパン
オーマガトキ

ジャック・ブレル
『ベスト・オブ・ジャック・ブレル Brel Infiniment Jacques Brel』
(UICY-9450)

アンリ・サルヴァドール
『ベスト・オブ・アンリ・サルヴァドール』
Henri Salvador Henri Salvador
(CD2枚組 UICY-1258/9)

『アコーデオン』
(DVD OMBX-1004)
[監督]ピエール・バルー
[出演]リシャール・ガリアーノ/タラフ・ドゥ・ハイドゥークス/クロポルト/ダニエル・ミル/モーリス・ヴァンデール/シブーカ/クロード・ヌガロ/coba/続木力/深川和美/まや他