〔写真:左=ピエール・バルー 『ル・ポレン』 中=ピエール・バルー 『サ・ヴァ、サ・ヴィアン』 右=ブリジット・フォンテーヌ 『ラジオのように』〕
今日から値上げの秋が始まる。 サラリーマンの厚生年金保険料、電気・ガス料金、輸入小麦も、何もかも上がる。まったく暮らしにくい世のなかだ。
アメリカの不良債権問題に端を発するツケが、世界中に飛び火しそうな勢いだ。1929年の大恐慌の再来さえ唱えられている。 日本を狂乱させた1980年代後半からのバブルの時代にも、その恩恵に浴することのなかったこの身にしてみればどうにも割り切れない。
閑話休題(それはさておき)。 今日リリースされるサラヴァ・レーベルのアルバムを紹介しておきたい。いずれも、しばし夢とファンタジーの世界に遊ばせてくれるものばかりだ。 リマスタリングによって、過去に発表されたアルバムが新たな輝きを放っている。
まずはサラヴァの総帥、ピエール・バルー Pierre Barouh と日本との絆を確立した記念碑的アルバム、『ル・ポレン〔花粉〕』(オーマガトキ OMCX-1211)。 高橋幸宏、坂本龍一、加藤和彦、鈴木慶一、清水靖晃といった当代一流のミュージシャンたちが作曲や演奏に協力している。ピエールの書く歌詞が持っているポエジーとみずみずしい日本人ミュージシャンたちの感性との出会いが貴重だ。 なお、ライナーノートを僕が書いていることも付け加えておきたい。
ピエールといえば、このアルバムを外すことはできない。『サ・ヴァ、サ・ヴィアン』(オーマガトキ OMCX-1209)
「僕たちの人生はこんな風に過ぎて行く/時には立って 時には座って/僕たちの人生は流れに従って行く/堂々めぐりをして 前へ進む/サ・ヴァ、サ・ヴィアン(行ったり、来たり)…」。
サ・ヴァ、サ・ヴィアン Ca va, ca vient。 ピエールのあの温かい声でこう歌われるとそんな気がしてくる。僕が彼の描く世界が好きになったのもこのアルバムからだった。
作詞に重きを置いているピエール・バルーは、まぎれもなくシャンソン・フランセーズの伝統に連なっている。しかし他方、ボサノヴァの伝道者としての役割も併せ持っている。 本アルバムに収録された「おいしい水」がいい例だ。フランス語歌詞とボサノヴァのリズムやメロディーが心地良く溶け合っている。
このアルバムには、ボーナス・トラックとして「遭難」「迷い」の2曲も収録されている。
ブリジット・フォンテーヌ Brigitte Fontaine の登場は衝撃的だった。 『ラジオのように』(オーマガトキ OMCX-1212)の表題曲は、いつ聴いてもそのショックを想い起こさせる。
アート・アンサンブル・オヴ・シカゴとのコラボレーションで歌い、語るブリジットのスタイルは、実に不思議な昂揚を与える。シャンソンとかジャズとかのジャンルを超えた圧倒的な存在感とパワーが、リスナーの心をとらえて離さない。
オーマガトキからは、さらに以下のアルバムも同時発売されている。
ピエール・バルー 『ヴァイキング・バンク』(OMCX-1210) ブリジット・フォンテーヌ&アレスキ 『野ばらは素敵かもしれない』(OMCX-1213)
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